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猫とペンスタンド

ペンスタンドの中には、ペンがあふれていた。
あふれながら、誰もが飛び出すことを夢見ていた。
尖ったの光ったの丸いの鋭いの長いの細いの新しいのくたびれたの、とっくに力を使い切ったペンも含めて入っていた。そして、中にはペンではないものも交じっていたが、ペン達は彼らを指して笑ったり邪魔者扱いするような真似はしなかった。ペンスタンドの中に放り込まれるからには、少なくとも自分たちと比較して何らかの類似点が認められるはずだったし、ペンスタンドの中に入ってしまえばそれが文字や色を生み出そうと生み出すまいと、同じ仲間として認めていたからである。それに加えて、ペンスタンドというものは、あまりにペンの仲間が寂しすぎる状態では往々にして安定感の不足を招き、ふとしたことで転倒してしまう危険があるということを、多くの経験から学び心得ていたのであり、それ故に輪を大事にするということは、ペンスタンドの中で暮らすペン達にとっては、染み付いた習性のようなものであった。それでいてやはり、ペンでないものはその用途もまるで異なるので、ペンの横に立っていても、ペンのライバルには決してならないため、その点ペンは安心して横に立っていられることができた。
ペンは、自分からは出て行くことはできなかったが、もしも自分が選ばれた時のことを思いながら、いつも狭い箱の中で退屈な時を凌ぎながら、自分の力を蓄え続けているのである。

「今日はどれにしようかな」

お婆さんが、筆をとる準備に入ると、みんなが一斉に立候補した。
ペンスタンドの中で、新星が生まれるようにペン達は回転し、少しでも目に付く場所を目指し移動した。
何本かは、重力に逆らって浮き上がってみせた。
はい!

「ぼく、ぼく、ぼく、ぼく、ぼく、ぼく、ぼく、ぼく、ぼく、ぼく、ぼく、」

みんなが、一斉に声をあげるので、お婆さんの耳には一つの声も届かなかった。
お婆さんは、適当にペンを選んで、走らせ始めた。
猫は、眠っていた。



未確認飛行物体

今すぐ
私を確認して私を
引き上げて

この狭い街から
私を救って

自由をください


未確認飛行物体

今ここで
私を認めて私を
引き立てて

この狭い星から
私を救って

自由をください

どこへ逃げても
どこまで逃げても
屋根の下

見張られている


未確認飛行物体

ずっと待っている


未確認飛行物体

早く降りてきて

この狭い世界から

私を解いてください




ペンは、走り出した。
止まっていた時間、眠っていた夢を吐き出すように優雅に雄弁に迷いのない軌道を描いて、お婆さんの指を引いて走り続けた。
選ばれなかった仲間たちは、今はおとなしくなった箱の中で身を寄せ合いながら、ただその雄姿を見つめていた。
「たまたま選ばれただけ」誰かが零した。
「選ばれただけのことはあるね」それには、誰も答えなかった。
ペンは一時も休むことなく、深まる夜の中を狂ったように駆け抜けていった。
ついには、お婆さんが疲れ、机の上で眠り込んでしまった時でさえ、走り続けたのだ。
「前しか見えなくなってるね」


朝、目覚めた時、書きあがった何百枚もの原稿を見て、お婆さんは飛び上がった。
「やったー! すごい! わたしってすごい!」
お婆さんは、自分でも気がつかない内に駆け抜けた筆力に、自ら賞賛の叫びをあげた。
どうだ、すごいでしょう。賛同を求めるように、猫を見上げた。
猫は、天井にくっついたまま、眠っていた。

その横顔は、広大な夢の中を遊泳する宇宙クラゲのようだった。

机の上から、音もなくペンが転げ落ちた。
薄目を開けて、猫は見た。




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junsora(望光憂輔)

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おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
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今日も散らばって行こう
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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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