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オフタイマー

 熱心に耳を傾ける猫に、お婆さんは優しく昔話を読み聞かせていた。
 あれは読んだ、これはもう聞いたと猫はわがままにリクエストするものだから、お婆さんはとうとう猫のためにオリジナルの昔話を作らなければならなかったのだ。お話の意味なんてまるで理解していないような猫ではあったが、その耳はお婆さんの語りを風のオーケストラを聴くように熱心に聴いているものだから、お婆さんも心を込めないわけにはいかないのだった。
 猫は、お婆さんの優しい語りを聴きながら眠りに落ちていくことを、ちょうど一つの季節が終わるくらいまでの間好んだ。
 
 昔々、あるところに働き者の猫たちが暮らす村がありました。電器屋さんの猫は、毎日毎日、最新の最新家電を売りつけていたのでした。
 
 猫がうとうとし始めたので、お婆さんはしめしめとお話をやめた。けれども、猫は途端に飛び起きてお婆さんを責めるので、お婆さんはまたお話を続けなければならなかった。
 
 出来立ての最新家電が出来たよ! そこのお兄さん買わないかい? 今買えばお兄さんも、最新の人になれるよ。だけども、もしも買わないならば、それは一番新しいチャンスを逃したということ。そうして逃したチャンスはどんどんどんどん古びて忘れ去られてしまうのだし、その間というもの、また最新家電は次々と更新されるので最新のものは追い越され追いやられ、本当の最新家電が最新のスポットを占めるのだよ。だけども、お兄さんが今それを最新のものとして受け止めてあげれば、それは今最新であるばかりでなく、いつまでもいつまでもその形がどんなに古びたとしてもその心意気はフレッシュなのだよ、お兄さん。買わないかい? 買わないかい? これはいつでも見過ごされるチャンスの中の一つに過ぎないよ。と猫が言うと、お兄さんは、今日はアンティークな風が吹いてらぁ、と言って飛んでいきました。

 恐る恐る、お婆さんが猫の方を見ると、猫はどうやら眠っているようだった。



やめないで
私はまだ耳を
澄まして聴いている

キミの声が
聴こえなくなったら
私も消えてしまいそう

やめないで
どうか
私のためにだけ


やめないで
私はまだキミを
頼りに生きている

キミの声が
聴こえなくなったら
ひとりで消えてしまいそう

やめないで
どうか
私のためだけに


やめないで
まだやめないで

やめないで
ずっとずっと
やめないで

私が息をしている間は

ずっとずっと

歌って




 猫が休んだので、お婆さんは羽を伸ばして最新家電売り場へいざ出発した。
 これぞ最新家電だよ! そこのお婆さん買わないかい? 今若い人の間で大人気の最新家電だよ。だけども、若くない人たちにとっても、決して若くはない人たちにとっても何も差し支えないどころか、とてもありがたい品物というわけだ。人気の秘密は何よりその新しさ。こいつは魔法だよ。絵も出る音も出る魔法の箱だよ。そこの素敵なお婆さん買わないかい? と猫の店員が言うので、お婆さんは丁寧に断った。

「テレビなら、もうありますわ」

 液晶画面の中では、戦国の武将が兜に宛がう漢字の一つについてああでもないこうでもないと悩んでおり、その横にいた美しい女が紙に書かれた一つの文字を拾い上げて、これこそがあなたにふさわしい一字なのではないかと進言している様子が映し出されていて、どうやら話はその方向でまとまりかけているようだった。
 また、その横のもう一つの液晶画面の中では猫が大あくびをしている。

 その横顔は、愛くるしいものだった。

 お婆さんの欲しい最新家電は、まだ新しすぎたためか、どこにも売っていないのだった。そして、それこそが自分がまだやらなければならない答えの一つだとお婆さんは考えた。


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テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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