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みかん

何かがモンスターエンジンのように唸りを上げた。
猫に向かって、ゆっくりと威嚇するように近づいてくるが、猫は丸まったまま動かないでいた。
お婆さんが、狂ったマシンの向こう側で何か叫ぶのが聞こえる。

「働かない奴は出て行けー!」
猫は、額だけを動かして後ろを振り返ってみた。
けれども、そこに働かない奴の姿は見つからなかった。お婆さんに見えて猫には見えない魔物が潜んでいるとすれば、それは恐ろしいことだし猫のプライドにかけても退治したいところだったけれど、相手がわからないことにはこの闘いは容易なものにはならない、と猫は思った。そして、じっとしていた。

「怠けているのはおまえかー!」なおもお婆さんの怒声が響く。
迫り来る未知の危険に吸い込まれ、命運が尽きる直前、猫はひらりと身をかわした。
今度は、猫の方がワインレッドの敵を追いかけ始めた。猫のプライドがそうさせるのだった。
丸い怪物は、お婆さんを操りながら所狭しと部屋中を動き回り、猫も負けじと追いかけまわった。
12月が、逃げて行く。



ああ終わるんだ

最終列車が出るまでに
ぼくたちは
駆け出さなければ

ああ待ってくれ

せめて最後は
願いのひとつを
聞き届けてほしい

奈落の底は
きっと新しい
扉につながっている


ああ終わるんだ

最後の鐘が鳴る前に
ぼくたちは
成し遂げなければ

ああ待ってくれ

せめて最後の
願いをひとつだけ
受け止めてほしい

孤独の底は
きっと新しい
世界につながっている


ああ終わるんだ

ああ終わるんだ

もうすぐ

すべて

ああ終わるんだ

ああ終わるんだ


終わるから

ぼくたちは

始めなければならない


ああ終わるんだ

最後の旅が始まるまでに
ぼくたちは
見つけなければ

ああ待ってくれ

優しい

きみは


それでも

ああ終わるんだ

最後の時が訪れるまでに
ぼくたちは
愛さなければ

ああ




猫の活躍によって、闘いは終わった。
部屋の中は、見違えるようにきれいになっていた。

「終わったー!」

お婆さんが、自分が大仕事を成し遂げたように言った。

「終わったー!」

猫も、真似して言った。
自分の働き振りを、誇らしく振り返りながら……。

その横顔は、訪れを待つ冬のように白かった。

お茶とミルクで、大いなる達成をお祝いした。
コタツの上には、みかんが山と盛られている。

 広がったみかんの皮にみかんおく

お婆さんが、みかんを手にして詠んだ。
猫は、一瞬耳を傾け、再びミルクを飲み始めた。





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テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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