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雲隠れ

世界は回っている。
幸か不幸かわからないまま、出会いと別れを引き連れて。
世界は回っている。
あまりに速く、回っていることを忘れてしまうほど。
世界は回り、回りすぎておかしくなっていく。

「ああ、神様!」

回転を終えた世界の中から帰ってきたものは、すっかり見違える姿になっていた。
お婆さんは、無理に体を細めて進入を試みたけれど、頭を入れることもままならなかった。
すっかり途方に暮れていると、世界のどこかから猫が歩いてきた。暖炉にあたるように身を寄せてきた。
寒いの?

「これはおまえにあげよう。これから、もっと寒くなるからね」



10周回って走り出す
世界はまだ回っている

キミの元へ
駆け寄ろうとするが
回っているのでたどり着けない

青と白が交錯する

回っているのは
世界か私か

世界の中心は
どこにもあって
どこにもない

10周回って立ち止まる
世界はまだ揺れている

自分の元へ
留まろうとするが
揺れているので揺れている

赤と黒が交錯する

揺れているのは
母か私か

世界の中心は
どこにもなくて
どこにもある

10周回って思い出す
世界はまだ回っていた

おかしくなりながら

誰かが呼んでいる




「御免ください」

お婆さんの家を人が訪ねるのは、久しぶりだった。
隣の町からわざわざやってきた女は、野菜を売ってくれるという。白いTシャツの胸の真中でカボチャが能天気に笑っていて、黒い長靴の先には今畑から飛び出してきたように土がついていた。
「あらあら、遠いところから」
お婆さんのセーターを着た猫は、小さな雪ダルマのように見えた。
女が視線を向けると、雪ダルマはますます小さくなった。
「あらあら、かわいい猫さん」
女が手を伸ばすと、小さくなった雪ダルマは、もっと小さくなって雪のてるてる坊主のように小さくなった。
「知らない人が来ると、縮んでしまってね」
てるてる坊主は、首を垂れながらお婆さんの背中の後ろに逃げていった。

その横顔は、3月の雲に溶けてゆくたんぽぽのようだった。


お婆さんは、コマツナを中心としてコマツナと愉快な仲間たちのジュースを作った。
ミキサーの中で魅惑のハーモニーを奏でて混じり合う、豊かな自然。
お婆さんの瞳の奥は、人里を遠く離れてやがて森の緑に染まっていった。

世界は、いつも回っている。
寝ても覚めても回っている。
回りすぎるので、おかしくなってしまう。
猫は、暇を見つけてかくれんぼする。


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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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