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キミを探して

「もうあげないよ」

と言っても、猫はまだついてくる。
振り返り、もうないんだよ、と言うと猫はじっと黙って聞いている。
けれども、歩き始めると、猫も後ろをついてくるのだった。


     ☆     ☆     ☆


遠足なんて、なくなってしまえばいいのだ。
どこまでも青く澄んだ空を見ながら、タカシはひとり思っていた。どこまで行っても、どうせ同じことだ。結局、元の場所に帰って来るだけ。そう考えると、準備をするのも馬鹿馬鹿しくなってくる。それでも、一つのコインを握り締めて、やってきた。
今、タカシは数あるお菓子の中から、遠足のお菓子を選ぶところだ。
菓子なんて、みんな一緒じゃないか!
数あるお菓子を見比べながら、タカシはまたおかしな気持ちになるのだった。
ポテトチップスのような奴、カールのような奴、じゃがりこのような奴、ガーナチョコレートのような奴、雪の宿のような奴、ハッピーターンのような奴、チーズビットのような奴、ポッキーのような奴、よっちゃんのような奴……。
みんな前に誰かが作ったようなものばかり、みんな前に誰かが口にしたようなものばかり、菓子なんてどれも同じだ。
そして、菓子なんてみんな同じだ、という言葉もきっと昨日誰かが言ったのと同じなのだ。
そして、菓子なんてみんな同じだ、という言葉もきっと昨日誰かが言ったのと同じなのだ、という言葉も、もうとっくに誰かが言ったのだ。
そして、菓子なんてみんな同じだ、という言葉もきっと昨日誰かが言ったのと同じなのだ、という言葉も、もうとっくに誰かが言ったのだ、という言葉なんかも、やっぱり誰かが既に言っているのだ。
どこまでも、どこまでいっても、言葉は追いかけてくる。世界一速い乗り物でも、言葉を振り切ることはできないだろう。人間である以上、無理なのだろう。
僕は、どうすればいい。何を選ぶ? 何を、口にする……。


     ☆     ☆     ☆


「ひとつ食べる?」

チーズビットをつまみながら、歩いていると、迷子の猫に会った。
猫は、うまそうにチーズビットを食べた。よほどお腹を空かせているようだった。
それから味をしめて、猫はひょろひょろとついてきた。
もうひとつくれ。何度でも、猫はそう言った。
どこまでも、どこまでも追いかけてきた。



忙しすぎる毎日の雨の中で
僕はキミだけに
パズルという名の手紙を出すだろう

決めつけられない
星たちの反応も
待つだけでは優しい形にならない
海の影絵のように

もう僕を陽気にするものたちは
湖に沈んだ黒い太陽が持ち去った

11月の雨が無知すぎるから
火星の砂時計は
クジラと踊る回り道ばかり

パンでできた机の足は
思い出の鍵でかけ合わせてしまえば
ハムスターの小さな屈折よりも
遥かに幸せには似ていたけれど

誘惑の五段活用を
ソナタの指先でトッピングしてまで
耐えたかさぶたのスープは
猫の気まぐれなウインクだけで
白くなってしまったよ

決して誓わない時計の針は
縮れた言葉のあやとりと
汽車を待つ鬼のじゃれあいの中で
飛行機雲の後編のように浮いているだけ

今はもう歌う人もいなくなった
人が人でなくなるように
いなくなってしまった

いつかクローンがやってきて
電波ジャックをやり遂げるのさ

キミはクイーンよりも強いライオン
育てているのは地球のレプリカではない
たったひとりの猫だった

忙しすぎる毎日の横殴りの中で
僕はきっと突き刺すだろう
夕焼けのパズルに託した水色の手紙を

さよなら

さよなら

キミと さよなら

さよなら キミを

探しにいくよ




「うちの子が来てないでしょうか?」

お婆さんは、額に汗を滲ませながら、訊いた。
今日はお見えになっていません、とキャットカフェのマスターはふにゃっと笑う。
「これだけ、いると大変ですね。
 中には、言うことを聞かないのもいるでしょう」
すると、マスターは笑顔を保ったまま、
「言うことを聞く者など、一匹たりともおりません。
 それでこそ猫というものです」
と言う。猫の話をするマスターは、とても楽しそうだ。
「それに猫は、みんなそれぞれなのです。
 兄弟でさえも、まったく違う猫の道を進みます」
はあはあ、そういうものですかね。
床に、天井に、テーブルの上に下に、椅子の上に下に、窓の中に外に、額縁の中に外に、コーヒーカップの中に外に、ありとあらゆるところに無数の猫がポジショニングしていた。
けれども、お婆さんの想う猫だけが、いなかった。


猫というものは、そういうものだろうか……。
お婆さんは、キャットカフェを出た後、マスターの言葉を回想しながら、赤く染まる空を見上げながら考えていた。
そういうものと言ってしまえば、そういうものかもしれない。
けれども、そういうものでもあってそういうものでもないのが、猫ではないだろうか。
お婆さんは、だんだんわからなくなってきた。そして、空はだんだん暗くなってきて、あれほど青かったのがうそだったみたいに暗くなってきて、いつかお婆さんは知らない道の上をひとり歩いているのだった。
「おーい、****!」
知らない道の向こうに向けて、猫の名を呼んだ。
空の中に、浮かぶはずのない猫が、青く浮かび上がった。

その横顔は、遥か遠く使い回しの空絵の上で、ただ一つ命のように揺れていた。



     ☆     ☆     ☆


どっか行けと言っても、猫はどこまでも追いかけてきた。
とうとうタカシの家の前まで来てしまった。
チーズビットは、もうすっかりない。

「家で食べていく?」

猫の方を向いて言った。
歩み寄って、抱かかえようと腰を屈めた。
けれども、猫は剣の一突きから逃れるように、素早く後じさりした。
それから、身を翻すと一目散に駆けて行った。
闇の中に見えなくなるまで、一度も、止まることも振り返ることもなかった。
何かを思い出したように、猫は、駆けて行った。



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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
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今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

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「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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