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3秒と少しの空

オオクボ選手が空へ飛んだのは3秒前のことだった。
そして、誰もがボール見失っていた。
お婆さんは、最初の1ページを開いた。
ページをめくる毎に徐々に平凡な日常から離れて、行ったことのない異国の地や、行くことのできない遠い宇宙を旅する。
主人公はそこで非凡な問題、切実な悩みを抱え、数奇な運命に翻弄されながら時に勇敢に、時には命の危険にさらされながらも、頼もしい仲間と素敵な偶然とお婆さんの応援の力によって生き抜いていくのだった。半分読んだ頃には、お婆さんはもう日常の大半のことを忘れているのだし、心はほとんど主人公に奪われているのだ。
お婆さんの読んでいる本は、SF冒険ミステリー恋愛ホラー小説、今時珍しい紙で出来た本だった。

オオクボ選手が空へ飛んだのは3秒前のことだった。
猫は、自分の隣にいるシャムネコの姿をみて驚きを隠せなかった。
「かくれんぼしないかい?」
シャムネコの言うがままに猫はシャムネコと一緒になって遊んだ。
本棚の上、テーブルの下、お婆さんのポケットの中、カーテンの裏側、テレビの向こう側、冷蔵庫の反対側、ありとあらゆる場所、お婆さんの読んでいる本の間、部屋の真ん中、まるで忍者屋敷で学ぶ忍者の基本的な授業のように、繰り返し隠れ合い、見つけ合った。
時々、お婆さんの世界の中にも立ち入って邪魔をしてしまったけれど、猫はシャムネコにそれはもう夢中だった。
自分よりもとても美しかったシャムネコ、
今まで見たどんな猫よりも美しかったシャムネコに……。



キミが空を
飛んでいる間
僕は時の間を
彷徨って

見知らぬ主人公と
ルーレットを廻す

ハラハラと
冒険の旅は
いつも夏のよう

キミが風を
抱いている間
僕は時の下に
潜り込んで

見知らぬ猫と
ムササビになる

ふわふわと
恋する旅は
いつも春のよう


もうすぐキミはおりてきて

さよならを告げる
ハッピーエンドは

3秒と少し




オオクボ選手が空へ飛んだのは3秒と少し前のことだった。
お婆さんは、最後のページを閉じるとあさっての方向を見つめた。
主人公はお婆さんが熱心に応援したおかげもあって、闇に包まれた多くの謎を解き明かし、見事に世界の秩序を取り戻したのだけれど、最後の最後に空から落ちてきた巨大なマシュマロに当たって死んでしまうのだった。きっとそれはお婆さんの知らない遠い宇宙から飛んできた隕石の一種だったのかもしれないけれど、お婆さんには何か納得のいかないものだったし、少しだけ作者のことを恨みもした。
物語は、いつも期待とはちょっと違う方向に進む。

オオクボ選手が空へ飛んだのは3秒と少し前のことだった。
2つの生き物は、隠れるところがなくなるまでかくれんぼをして遊んだ。
その間、シャムネコは猫と友達になり、猫はシャムネコに恋をしていた。
ムササビごっこをしながら、いつまでもこの時間が続くことを願った。
けれども、猫の飛行時間は思いのほか短かったのだ。
お婆さんが本を閉じた瞬間、猫は音も立てずに着地した。
すぐ横にいたはずのシャムネコの姿を、お婆さんの瞳の中に探した。

その横顔は、恋のムササビ飛行を終えた猫の操縦士のようだった。

ボールを見つけたオオクボ選手が頭で合わせると、地上に下りて来た。
アクオスの中で、わーっと歓声が沸き起こる。
シャムネコのような速さで、何かがネットを揺さぶった。
猫は、お婆さんにもたれかかりながらゴールを見つめた。
3秒と少しの時間を思い出す。




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テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
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今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

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「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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