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最後の日曜日

 *決定的一日

世界最後の日が、日曜日に決まった。
最後だから、本当に終わってしまう。
「日曜でよかったよ。あの人と顔を合わさずに済む」
「でも、ちょっと寂しいんじゃないですか? 最後ぐらい……」
馬鹿なこと言うな、と、村川さんは笑う。寂しいわけない、と。
神様はなぜ、世界最後の日を日曜日に決めたのだろう。


 *挨拶

「あ、こんちは」
すれ違いざまに、挨拶される。
「こんにちは」
顔を上げると目が合ったので、とりあえず挨拶を返した。
けれども、まったく知らない人であった。
もう会うことも、ないだろう。


 *生きている

ぎんちゃんが死んだ、ときかされた。
勝った時は、最高にうれしそうだった。
負けた時は、下を向いて動かなかった。
それでも、まだまだだと言った。まだやるぞと言った。
勝った時だけ、たまにごちそうしてくれた。
ぎんちゃんは、やっぱり生きている、ときかされた。
噂にすぎない話であった。
今も世界のどこかで、歩き笑い、勝ったり負けたりしながら回っている。
世界のどこかで。


 *ボレーシュート

試合中に芝を刈るのはやめてほしい。
選手たちは抗議しながら、ピッチの空いたところでボールを追っている。
狭いスペースで競り合いになるため、いつになく厳しい試合であった。
芝を刈る時間くらいいくらでもあるだろう……。
そう言う選手もいたが、いくらでもあったのはとっくに昔の話である。
すっかり時間は歪んでしまったのである。
今日の試合は、前半だけで打ち切られることになった。
誰一人、選手もサポーターも何者も出し惜しみするものはない。
早くもやって来たロスタイム、ゴール前に緩やかなアーリークロスが入る。
ニシザワ選手は当たり前の如くボレーシュートを放った。
止めている暇なんて、ないのだった。


 *知りたいの

「夢十夜って知ってる?」
「知らない」
「パレードはどこでやってるの?」
「知らない」
「CAS冷凍はおいしい?」
「知らない」
「キズパワーパッドは早く治るの?」
「知らない」
「カラフルは何色?」
「知らない」
「チルドレンは何歳?」
「知らない」
「物語はいつ始まるの?」
「知らない」
知らないと言うと、ミナちゃんは質問を変えた。
知っていると言ってもそれ以上は訊かない。
次から次へと、質問をぶつけてくるのだった。
「ロボット三原則は何と何?」
「さくらはいつ帰ってくるの?」
「次の開催地はどこなの?」
「六番目の小夜子は何番目?」
「マイクロトマトは何センチ?」
「地球は今日で何周目?」
「台風の目は何を見てるの?」
「ジョニイへの伝言は届いた?」
「なんで、そんなこときくの?」
「知りたいの。私、知りたいの。もっともっと知りたいの。
 知れる間に、知りたいの」
ミナちゃんは、泣きながら知りたいと言った。
知りたいというだけで、知りたい理由は置いてきぼりなのだった。
答えるだけは、とても疲れる。ついには嫌になる。
「もずくとめかぶとどっちがおいしいの?」
もう、どっちでもいい。
どっちでもいいし、どうでもいい。
質問攻めに疲れて逃げる。


 *ホテル

終末に近づいたホテルは、いっぱいだった。
フロントの人は、特別に従業員控え室を用意してくれた。
「申し訳ないので、安くしておきます」
ただというわけにはいかないようだった。
従業員控え室のソファーでくつろいでいると、従業員男と従業員女が手をつないで入ってきた。それから二人は人目をはばからず唇を合わせた。咳き込んで自分の存在を気づかせようとすると、何この人という目で従業員女に睨まれていたたまれない心持になる。従業員同士の引継ぎはできていないのであろうか?
従業員男と従業員女は何度も唇を合わせた後、互いに制服を脱いで裸になり激しく抱き合った。抱き合いながら、崩れながら床に落ちて、更に強く体を合わせるのであった。世界最後の夜のように、二人は愛し合っている。
二人の営みを眺めているのは、思いの他寂しく、屋根裏部屋かボイラー室にしてらもらえば良かったと深く後悔する。
せめて電気を消してくれればいいと思うが、まったくそうした様子はない。
ソファーにうつ伏せになって、無理やりに眠ることする。


 *最後の日曜日

村川さんが、来ていた。
「村川さん、今日日曜日ですよ」
そうだったか、と村川さんは寂しい顔をしている。
「世界最後の日ですよ」
そうだったか。村川さんは、木曜日のような顔をしている。


 *次の月曜日

何事もなく、月曜日がやってきた。
みんなは喜んだ。喜び方はそれなりだった。
そして、何人かは世界が終わったような顔をしていた。



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おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
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今日も散らばって行こう
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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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