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絵になる猫

順路をたどって歩いた。
一つ一つの絵を遥々と見上げる。
絵の中には、それぞれに風景があり世界があり物語があり、猫はその中に入り込んではしばらくの間、自分が猫であることを忘れてしまうくらいの間、うっとりと見入っているのだった。森が深ければ更に深く入り込んで秘密の森を探しにいき、空が青ければ青さの中に溶け込んでどこかにあるはずの雲を探しにいき、見たこともない食べ物が盛り付けられている時などは一つ一つ匂いを嗅ぎ、舌を出してみた。
けれども、そのすべては絵の中のことだ。
ふと我に返ると、猫は、自分がどこにも行ってなくただ首がずいぶん疲れてしまったことを知るのだった。
くるくると首を回し、ついでに体も回し、猫としての自分を取り戻す。
そうして再び、歩き出し、歩き出しては立ち止まることを繰り返す。
他の人間たちも、きっと同じようにそうするのだろうか?
猫にとっては、ちょっとした謎であった。



小さな足跡重なって
重なって重なって
いつか真っ黒い
夜になった

星をつかって
描いたら
きっと誰かが
見つけてくれる

夏が消えるまでに
きっと誰かが

小さな傷跡重なって
重なって重なって
気がつくともう
朝になった

雨音だけで
奏でたら
きっと誰かが
聴いてくれる

雲が消えるまでに
きっと誰かが

いつか
順路を見失う
時が訪れても

生まれたものは
おいていく
ひとつの風を

小さな涙が重なって
重なって重なって
空より透明な
絵になった

逆行するしか
ない時に
きっと誰かが
わかってくれる

道が消える前に
きっと誰かが

いつか
出口しか
見えなくなっても

生まれたものは
生きていく

生まれたものは
生きていく




一つの絵が今まで以上に猫の目に留まった。
帽子の女が小さな猫を抱いて椅子に座っている。
思わず猫は、あっ、と叫び声を上げるところだった。
なぜなら、それはかつての自分の姿に違いなかったし、それが絵として残っていること、この場に飾られ大勢の人々の目に触れられていることに感慨を抱きながらも、いったい誰がいつの間に描いたのか不思議でならなかったからだ。
猫は、飛び出しそうな「あっ」をなんとか呑み込んだ。
帽子の女は、お婆さんその人だった。
お婆さん……。
猫は、消えたお婆さんのことを思い出して、いつも以上に真っ白になった。

その横顔は、絵の中のみどりに落ちた露のようにぷるぷると震えていた。

ようやく訪れた出口。
本来ならそこから出て行くのが道理であった。
けれども、猫は少しも迷うことなく引き返した。
かっこいい制服を着た男が追いかけてくるのは、きっと猫の応援団に違いなかったけれど、猫は足を緩めることはなかった。
絵の世界から解き放たれた猫、人々と逆の方向に走る猫は、いつもどおりの猫だった。

ほどなくお婆さんを発見する。
それはほとんどまだ入り口に近い場所であった。
3番目の絵の前で、降ってくる餅を待つ時のように、お婆さんは立ち尽くしていた。
猫も、お婆さんの隣に座り、再び遥々と絵を見上げた。
2度目に見るそれは、またどこか違った世界にも見えてくるのだった。
閉館の時が迫ってきていた。
けれども、猫とお婆さんはまだまだ動かない。
まるで、絵になったように動かなかった。



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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
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今日も散らばって行こう
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「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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