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夏の闇

それにしても、やけに暗い。
ただ暗いだけの道は、少しだけ首筋を冷たくした。
金網の向こうに最初に現れたのは、猫だった。
お化け屋敷など所詮は子供だましである。流しそうめんくらいに涼しくなればいいのである。
猫は気配を察すると振り返り、そのまま動かない。
首だけを後ろに向けた姿勢は人からすれば少し無理が入っているような気がするが、猫にとってはそうでもないのか表情一つ変えず目を輝かせている。
なぜ、猫なのだろうか? たまたま迷い込んでしまったのか、それともここで働いているのか、捕らわれているのか。もしかすると、あれは猫のように見えて猫ではないのかもしれない。そう考えてみれば動きがどこか猫離れして見えなくもない。
確かめたくて、もう少し近寄ってみようとすると猫はぷいっと顔を背けて、奥の方へ消えてしまった。猫が消えるとまた暗闇が深まった。

謎を残したまま歩いていくと、暗い道が続く。
所々にあるローソクの灯りを頼りにゆっくりと進む。地面がやけにぬるぬるとしている。まるで雨を吸い込んだ泥道のようである。靴が汚れてしまうのが心配であるが、外の世界に出るまでそれを確かめる術はない。転んでしまわないように、少し大股になって歩く。

次の光で現れたのはお婆さんであった。お婆さんは、薄暗い光の中で灰色の布切れを纏っていた。そして少し苦しそうに地面に四つん這いになりながら筆を握っていた。長く乱れ伸びた髪が顔を覆い隠し、その目を見ることはできなかったが、お婆さんは確かに苦しそう、あるいは泣き出しそうに見えた。縦に大きく広げられた白い紙に向けて、今まさに何かを書こうとしているようであった。
けれども、いつまで待ってもお婆さんは書き出さない。書くべきことを忘れてしまったのだろうか。それとも本当に苦しくて書けないのだろうか。
やがて筆の先から、ぽつりぽつりと墨が垂れてきた。それは赤く、赤く、まるで血のように赤かった。
気持ち悪くなって小走りに駆け出したが、ぬるぬる道が邪魔をする。
ぴちゃぴちゃと音が、あとをついてくる。それは水を食べた泥の音、あるいは赤い墨の音であった。
お化け屋敷。
その横顔は、何人も決して足を踏み入れてはならない魔物の庭のようであった。



どこへ続くか
闇深き道の果て

誰も知らない
罪深き闇の果て

怖い怖い
こわい

わからない
からこわい

何が待つのか
何ゆえ待つのか

すべての隣人は
いなくなってしまった

天空に浮かぶ
銀色の廃墟で
笛が鳴る

怖い怖い
こわい

人間は
子供は
こわい

わからない
からこわい

かつては
誰もが
通った道だ

おそるおそる
振り返る猫

道は
限りない







闇を追いすがってくる音がしなくなると、徐々に道は明るくなった。
そして目の前に現れたのは小さな教室だった。

「夏休みの自由研究は何にする?」
「カブトムシの価格変動について?」
「もうすぐ戦争が始まるんだぞ」

「読書感想文はどうする?」
「ハリーにする指輪物語にする?」
「読めるの?」
「もうすぐ戦争が始まるんだぞ」

20人足らずの子供たちが、だらだらとしゃべっているところだ。
夏休みはまだなのだろうか?
先生はいないので、自習の時間、あるいは休み時間なのだろうか?

「先生、早く、早く!」
金網の教室の生徒たちが一斉にこちらを向いた。

「早く、宿題出してよ!」
一人の少女の手が金網の向こうから伸びて来て、あり得ない力で引っ張った。
気がつくと、教壇の上に立たされているのだった。
子供たちは、全員銃口を教壇に向け構えていた。 

「撃てー!」
学級委員の声が、響く。
その時、目の前がはっきりと暗くなった。






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テーマ : ホラー・怪談
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

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おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
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今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

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「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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