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2008-07-14 Mon 12:08
ポケットの中にもそれはなかった。
家の前で、巾着袋をひっくり返してみる。 けれども、出てきたのはキャンディーに、クッキーに、ビスケットに、チョコレート…… どれもこれも虫歯団の結成に一役買いそうなものばかりだったけど、お婆さんの探し物はついに出てこないのだった。 そんなこともあろうかと思って、鉢植えの下にお婆さんはこっそりともう一つのそれを隠しているのだし、その隠し場所を知っている者といえば、広い世界の中にあっても猫を除けばお婆さん一人だけなのであった。 よっこらしょっ、とお婆さんは鉢を抱え上げるとニョロニョロとミミズが現れた。 初めて空に浮かんだペンギンのように、小刻みに戸惑いながら……。 早速、猫は激しくステップを踏みながら闘いの意志を伝えるのだけれど、その波動は猫の爪の先で留まったまま地面から一センチさえも流れていかないのだった。 やがて、猫は小さな生き物を見下ろしながら、それが自分の敵ではないと悟ったように落ち着きを取り戻した。 そして、それよりもっと深い絶望を伴った落ち着きが、お婆さんの顔に浮かぶ。 入れなくなった家の前で、お婆さんは月を見上げた。 月はとても、丸かった。 やがて僕らは 合鍵を作る 技術を手に入れた 作ろうと決めたら たった5分で 出来てしまうだろう もうこれで 心配いらない どこかで落としても どこかで失っても 僕らはついに 合鍵を作る 技術を手に入れた どんな複雑な形も 少しも狂いなく 合わせてしまうだろう もうこれで 不安はないよ どこかで離れても どこかで引き裂かれても もうこれで 大丈夫 僕らはだけど 合鍵を作らない なぜか どうしても 合鍵を作れない 僕らの かえるところも 抱えられるものも ひとつしかないのだから いつもどこかで失うことに怯えながら いつも 見ていることを 想っていることを 触れていることを そして 恐れを 共有しながら ようやくたどり着いた 到達点に 僕らは鍵をかける ぎゅっと 強く 永遠に 代わりのない キミと その時、猫は立ち上がった。 鍵穴の奥を、のどの奥を熱心に探るお医者さんのように覗き込んだ。 そして小さな頭をくっつけると、ぐいぐいと押し付けながら無謀な前進を試みた。 けれども、徐々に猫の額が頭が首が吸い込まれ、ついには胴体までが見えなくなってしまった。 異次元の鍵穴の中で、猫は秘密の暗号を解きながらもがいていて、かろうじて外の世界に残っている尻尾が、あらゆる方向に揺れ動いている。 やがて、それは切ない形に落ち着いた。 S O S お婆さんは、猫の尻尾を握り締めると精一杯こちらの世界に引っ張った。 帰って来い、帰って来い、と言いながら月に照らされた綱引き大会が続く。 やがて、カチリと何かが回転する音と共に、猫が戻ってきた。 その横顔は、とけたバターで出来た猫のように不完全な猫だった。 猫とお婆さんは、色々あったけれどようやく家の中に入ることができた。 やっぱり、家が一番だ。 そして、一緒にお風呂に入った。 |
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