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2008-05-27 Tue 22:37
どうしてもどうしても伝えたいことがあった。
由佳は手紙を書いた。 一ヶ月ぶりに歩く外の世界には、人や車や風が流れていたけれど、なぜか未来の世界に訪れてしまったような気がした。 窓から吹き込んでくる風とは違って、本物の風は大きく冷たくて、気を引き締めて歩いていなければどこか遠くへ飛ばされてしまいそうだった。 赤信号で足が止まると、右手の手紙をきつく握り締めた。立ち止まることの不安から足が震える。 けれども、青信号に変わる時には、それは歩き出すことへの不安に切り替わっているのだった。 変わることのない赤色の箱を探して歩き続けるのだけれど、いくら歩いても見つからず何度も見かけるのは灰色の箱で、それには天国と地獄を分けるみたいに 燃えるもの、燃えないものなんて書いてある。 どちらでもないものは、どこに行けばいいのだろう……。 あるいは、そんなものはないというのか……。 突然風が、未来からやってきた郵便屋さんであるみたいに水色の封筒をさらっていった。 燃え尽きそうな太陽の下で空全体が、まるでポストのように赤く染まっていた。 受け取ってくれる 箱が見つかるまで 私はずっと歩くだろう 風が吹いても 投げたりしない 灰色の口が 微笑みかけても 騙されない 受け取ってくれる 時が訪れるまで 私はずっと待つだろう 雲が鳴っても 離したりしない 闇が色を 包み隠しても 諦めない 私はずっと 持ち続けるだろう 赤い空の向こうに あなたを描いて お婆さんの郵便受けは、いつも空っぽだった。 だから今日も空っぽなのだけれど、お婆さんは毎日それを確かめに行くのだった。 それは朝のちょっとした運動のようなものであったし、当たり前の空っぽを確かめるのを少しも苦にしないお婆さんにとって、ほとんど習慣のようになっていたのだ。 「さーて、今日も空っぽかね……」 お婆さんが銀色の郵便受けを開けると、空っぽがどこかへ逃げ出していた。 なんと、そこには一通の手紙が入っていたのだ! < 辻 影踏 さまへ > けれども、お婆さんは辻さんでもなければ、影踏さんでもなかった。 間違い手紙だ。 お婆さんは、しばらくの間、見たこともない名前を眺めていた。 その横顔は、ひらがなを習い始めて3日ばかりの少女のようだった。 猫は、お婆さんの手からそっと手紙を受け取ってくわえた。 影踏さん、待っていろ! 白猫郵便屋さんは、朝日に向かって流星のようにスタートを切った。 |
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