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2008-05-03 Sat 08:06
今日はろくなものが釣れない。
スリッパに、サンダル、つっかけや、草履、長靴に、ロンドンブーツ……。 まるで志村けんのコントみたいなものしか釣れない。 お婆さんは、アイーンを繰り返しながら穏やかな波を見つめていた。 すっかりと、朝。 海にやってきてからもう軽く半日が過ぎているというのに、なかなか本命がかからないのだった。 「ん、ん、 これは!」 お婆さんは手ごたえを感じて、クルクルと腕を廻し始めた。 コントを超える何か、雑貨的なものでない生身の重さが伝わってきて、この日初めて手に力が漲っていくのが感じられた。 ついに釣り上げたそれは、アオリイカだった。 お婆さんは、がっくりと肩を落とした。 「猫船長! ダメでした」 けれども、猫船長はじっと海を見つめたまま動かなかった。 まるで、眠ってしまっているかのようだった。 一番好きなものは いつも最後にとっておく 時々 誰かに持っていかれたり 壊されてしまうこともあるけれど 一番好きなものは きっといつか戻って来る 一番好きなものは 大事に大事に 残しておく 時々 大事にしすぎて 忘れてしまうこともあるけれど 一番好きなものは きっといつか思い出す 一番好きなものは ずっと遠くにおいておく 本当に 必要になった時 一番好きなものは 最後に待って いてくれる 「猫船長、今日はこのまま引き返しましょう」 お婆さんの提案を、長靴を履いた猫船長は完全に無視した。 それというのも、その時猫船長の手は覚えのある手ごたえをしっかりと掴んでいたからだ。 グイッと竿を引き上げると、びっくりタコが姿を現し、お婆さんが横からヒョイと網を差し出して見事捕獲に成功した。 次の瞬間、びっくりタコが黒い液体を勢いよく噴き出したため流石の猫船長もよける暇もなく、その場で固まっていた。 その横顔は、完全な夜によって塗りつぶされた虎のように静かだった。 おかげで、猫船長はその日一日を黒猫として過ごさなければならなかったのだ。 お婆さんは、笑いをこらえながら大きな声で叫んだ。 「猫船長、本命を捕まえました! 行きましょう! 大阪府庁へ!」 たくさんのたこ焼きが作れそうだった。 みんなに元気が届けられそうなくらいに……。 猫船長は、力強く舵を切った。 |
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