心 の 隙 間 か ら 出 て お い で
猫の代名詞
2008-04-22 Tue 21:53
そんなに寝てばかりいると、豚になるよとお婆さんは言う。
眠ったくらいで豚になるということがあるのだろうか?
まどろみながら猫は、考えていた。
もしもそうなら眠ることは、生まれ変わることに似ている。
毎日が生まれ変わりの連続で、夢見ている間に自分の夢見る姿に、あるいは恐れるものに形を変えていくのだ。
目覚めた瞬間、別の自分になる。
心も……。
猫は、自分が巨大な人間になることを想像して一瞬ギョッとした。

*

少し豚になってきたのではないか……。
食べること夢見ること、猫にとってそれは自分が歌うことと同じように大事なことだ。
お婆さんは、十分に理解しているつもりだったが時々猫のことを心配して小言を言ってしまう。
豚汁を飲み終えて、新しい歌を考えた。
けれども、今は何も浮かばなかった。
猫の姿を眺める内、なんだかお婆さんも眠たくなってきた。



ブタといったらかわいそう
あの子とってもかわいそう
なぜならあの子は
ブタなんかじゃない

そんなこと言ったらかわいそう
あの子がとってもかわいそう
どこからみてもあの子
ブタなんかじゃない

ブタと言う奴がブタだよ
だからあの子に謝りなさい
ブタなんて呼んだこと

*

私ブタです
人が名づけてくれました
選ぶ余地もなく
私はブタです

時々人が人のことを
私の名で呼ぶことがあるけど
呼ばれた人が泣いているのをみて
私とっても
泣きたくなるのです

それでも
私ブタです
牛でも猫でも人でもなくて
私ブタです




猫は目を覚ますとまずは一安心した。
どうやら自分は、人間なんかにはなっていない。
いつものように猫のようだ。
自分が自分であることだけでこれほど嬉しい自分に少しだけ驚いた。
そして、牛になったお婆さんを見て今度はもっと驚いた。
ひとのことを心配していたお婆さんの方が牛になってしまうなんて!
牛は、ゆっくりと猫の方に歩み寄ってきた。

その横顔は、前世と来世とミルクが入り混じったように揺らいでいた。

「モー モー ……」
そして
「ンモー、」
などと話しかけてくる。
けれども、牛の言葉は猫にはまるでわからなかった。
猫は、近づいてくる牛を十分に引きつけてから、ひらりと身をかわした。
久しぶりに、いい運動になりそう だった。













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