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果てしないラリー

疲れも見せず、猫は首を左右に振っていた。
本能がそうさせているのかもしれない。
じっとしている物より、動いている物の方へより興味が向いてしまう。
ベンチにちょこんと腰を下ろしたまま、猫はコートの様子に心奪われていた。
これは闘いではない。遊戯なのだ。
なぜなら、決着をつけることより続けることの方が大事なのだから。
猫は、素人選手の永遠のラリーを追いながら、少し小難しいことを考えていた。
このささやかなボールのやりとりが、現代社会の中での小さなつながりなのかもしれない……。
人と人との、本当にささやかな。
けれども、猫にとってはそんなことはどうでもよかった。
素人にしてはなかなかうまいぞ。
うまいもんだ。
猫は、果てしないラリーを追いかけ続けた。



ラリーは続く
ブルーな日にも
2回4回6回8回

ラリーは続く
忘れた日にも
印を残して

やがて
安らぎの日が訪れて
ふりだしに戻るけれど

ラリーは続く
真っ白い日にも
深い都会魔界地階

ラリーは続く
無理に見えても
拾って生きる

いつか
落ちて見失って
やり直しになるけれど

ラリーは続く
ブルーな夜にも
4回6回8回10回

ラリーは続く
声なき声で
数え数えて

ゲームセットは

まだまだ先だ




どうやらゲームセットが訪れたらしい。
素人選手たちが引き上げると、続いてマルチナお婆さんが登場した。
若いコーチがサーブを打つ。
勢い良くお婆さんがラケットを振り上げると、見事に空振りだった。
サービスエース。
穴でも空いているのか……。
お婆さんは、不思議そうに自分のラケットを見た。

その横顔は、魔法の湖を覗き込む傷ついた白鳥のようだった。

今度はお婆さんがボールを手にとって、サーブを打った。
コーチは俊敏な動きで追いつくと、バックハンドで打ち返した。
お婆さんは一歩も動けなかった。
リターンエース。
見知らぬ者同士の昼食会のように、寂しいやりとり……。
ベンチの上で猫は、気だるそうに頭をかいた。
それから、横になった。
お婆さんの上達を夢見ながら、やがて眠りに落ちていった。






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テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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