消える消えない
2008-03-22 Sat 08:56
「残しておいてくれないか。
 全部消してしまわないでもいいじゃないか。
 毎日のようにじゃなくても、たまに連絡したり、
 また会える…」

「ましだから。完全に、
 消えた方が、ましだから。
 消せなければ、進めないから」

そこで、お婆さんはテレビを消した。
すると猫が文句を言いそうなものだったが、それは猫の好みの番組ではなかったし既に眠っていたこともあって、猫はやはりそのまま静かに眠り続けていた。
お婆さんは、ほっと胸を撫で下ろしてテーブルの上を片付けた。
といっても、お婆さん一人分の食事を片付けるくらい猫の手を借りるまでもない。
大抵いつも少し残ってしまうのは、お婆さんが小食というわけではなく少し多く作ってしまうためだった。
デンターライオンで歯を磨き終えると、部屋の明かりを消した。
今日が無事に終わった。



足跡一つ残さずに
夜を一つお祭りにして
空飛ぶ円盤みたいに
消えていく

二人だけの秘密を残し
一足先に東の空へ
いつかの朝のように
キミが

そうだ
誰もがいつも
消えていくのだ

消えない何かを残すために
やってきては繰り返し

消えない何かを残すために
やってきては繰り返し

手掛りひとつ残さずに
世界をひと時ミステリーにして
遥かなる星座のように
消えていく

自分だけの美学を残し
伝わることのない
メッセージのように
キミは

そうだ
僕らはいつも
消えていくのだ

消えない何かを残そうと
躍起になってはまた

消えない何かを残そうと
躍起になってはまた

繰り返し 繰り返す

消えた昨日が今日となり
消え行く今日が明日へと
そうして新しく
生まれ変わっていけるように

繰り返せる
限り
繰り返す

消えない想いを
消えない何かに
託すように




次の日がやってきた。
朝は昨日の残りから始まる。
残っているということは、何と素晴らしいことだろう!
グツグツと鍋の中で、うどんを煮込む。
するとできあがったのは、カレーうどんだ。
早速いただきます。
お婆さんはすっかり温まった。
食べ終えた後も、カレーの匂いはしばらくの間残っていた。
その頃猫は、お婆さんが一晩温めていた場所で朝を温めていた。

その横顔は、昨日と変わらずお婆さんを安心させる。

お婆さんは、コーヒーを入れテレビをつけた。


「…消せなければ進めないから。
 新しい場所に進めないから」

昨日、消した場所からドラマの続きが始まった。







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この記事のコメント
ぉ初デスぅ^^
訪問履歴が残ってたのでお邪魔しました(b*´v`◆)

青字のとこの詩とかメッチャ素敵で思わず何度も読み返しちゃいましたぁ(*〇´∀`艸)*゚。
2008-03-27 Thu 08:22 | URL | 姫路るり #UR.QAeJM[ 内容変更] | top↑
姫路るりさん、はじめまして。

読み返してもらえるとはうれしいです♪
何度も読める世界に憧れを抱いています。

僕のうたは、消える系が多く、
気づくと、テーマが消える方向に流れます(^_^;)
2008-03-27 Thu 13:04 | URL | 望光憂輔 #H8Em3lUo[ 内容変更] | top↑
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