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冬のあなたに

猫を膝に抱いて、お婆さんは闘っていた。
出る釘は打たれるものだが、腕のいい釘師ならば出すぎた釘までその鍛えの入った腕で打ち付けて、いかなる方向にも曲げることができるのだ。
だから、今日の「冬のあなた」はとても手強い。
今日はもう、出そうもないね……。
そう言うと、猫も頷いた。

パチンコ玉出を早々に脱出した。
まだ、空に少し青さが残っていた。

   出します! 出します! どこまでも。

旗は、嘘だけを載せてどこまでもなびいていた。
少しだけ、春の風だ。
冬のあなたよ、さようなら……。



元気だった頃
一度押せば
顔をみせた

もう何度
押してみても
あなたは出ない

枯れているのか
萎れているのか

カチカチと
ノックする音だけ
虚しく響いてる

元気だった頃
ひと時休めば
元に戻った

もう何を
試してみても
あなたは戻らない

隠れているのか
渇いているのか

もしもしと
呼びかける声だけ
虚しく響いてる

もう出ないのか

あんなにも
元気だったのに

空っぽになった
冬のあなたに
さよなら言おうか




デンターライオンは、もう出てこなかった。
それでもあきらめるのは早すぎる。
ない知恵を搾り出すように、お婆さんは必死でチューブの端っこをつまんで同時に喉の奥からまじないのような声を出していた。
本当はまだ少し残っているデンターライオンは、人の心を知ってか知らずか、まるで外の世界に出て行くことを頑なに拒む子供のように頑張っていた。
残りが少なければ少ないほど、その最後を惜しむようにデンターライオンは頑張る。

「出ておいで、出ておいでよ……」

お婆さんは、懇願するように語りかける。
すると、部屋の片隅から猫が出てきた。

その横顔は、冬の終わりのデンターライオンのように白かった。

けれども猫には少しもかまわずに、お婆さんはデンターライオンを今度は両手で握り締めて、まるでお侍が切腹する時のように腹に力を入れて頑張っていた。
その頑張りに、デンターライオンもとうとう少し折れて、ほんの少しだけ出てきた。
お婆さんは急いで歯ブラシを手にすると、あたかも小さな金魚をすくう時のようにデンターライオンに近づけた。
デンターライオンは、素早く身を縮めた。
歯ブラシは、まだ猫のように白かった。






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テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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