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猫の照明

反応は遅かった。
お婆さんの月の大地での最初の一歩のように、とてもゆっくりゆっくりな郵便屋さんのように。
届くのには時間がかかる。
そしてようやくにして光を灯す。
けれどもそれはすぐにちかちかと明滅を繰り返し落ち着くことがなかった。
いつ頃からか、お婆さんの家の明かりは頼りなく不安定で元気だったり不機嫌だったり、はしゃいでみたりしょんぼりしていたり、突然正気を取り戻したかと思えばずっと長い間落ち込んでいたりする。
今日は、激しく不安定な調子だ。
もうそろそろ、新しいものに取り替えた方がいいのかもしれない。
そう思いながら、もうすぐ春は来るのだろうか来ないだろうか、とお婆さんは思う。
気まぐれな光は、まるで猫に似ていた。



もしもキミが
ちかちかと囁いて
去っていったら

大きな冷蔵庫の中で
僕は冷たい
迷子になるだろう

もしもキミが
ちかちかと疲れて
眠ってしまったら

冷たいジオラマの中で
僕は大きな
子供になるだろう

もしもキミが
ちかちかと瞬いて
消えていったら

東も西も忘れて
おかしくて
ただ笑うだろう

誰もいなくなった
気楽な道を
歩いていくだろう

だとしても
だとしても

歩いていくだろう




猫は冬の散歩道をひとり歩いていた。
久しぶりに雪が積もった街の夜はとても静かで、鼠一匹いない。
みんなどこに行ってしまったのだろう……。
空に向かって謎を吹きかけた。
それから犬のようにスキップしながら猫は歩いてみた。
誰も見ていないと思うと、恥ずかしくもない。

その横顔は、打ちとけ始めた雪だるまのようだった。

煙草屋の角を曲がると、眩い明かりが猫の白い顔を照らした。
ひとに反応して点灯する照明だった。
瞬間、猫はピンと背筋を伸ばした。



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テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
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今日も散らばって行こう
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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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