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太郎くん

昔々、裏の島に太郎さんという青年がおりました。
太郎さんは、よく眠りよく食べよく学びよく笑いよく誰かに間違われました。
けれども、裏の島はとても小さく血気盛んな太郎さんには、だんだん物足りなくなってきたのです。

「僕は、そろそろ出て行かなきゃならないんだ!」

太郎さんは、早速出て行く準備に取り掛かりました。
スーツケースに、服やら洗面道具やら思い出のアルバムやらを詰め込みました。
けれども、『ドラえもん』の本だけがどうしても見つかりません。
太郎さんは、あっさりとあきらめて靴を履きました。
靴は、ぶかぶかです。
なんと巨人の靴だったのです。



ほとんどの人は
きみの顔を
知らないだろう

ほとんどの人は
きみの声を
知らないだろう

ほとんどのものは
きみの前を
通り過ぎるだろう


ほとんどの人は
きみの顔を
少しも見ないだろう

ほとんどの人は
きみの声を
本気で聴かないだろう

ほとんどのものは
きみの前を
あっさり通り過ぎるだろう


だけどきみは
唄うのだ
ほんの一瞬
誰かが足を止めるまで

繰り返し繰り返し
唄うのだ
ほんの一瞬
誰かが振り返るまで


ほとんどのものが
行き過ぎる道の上

ほんの一瞬のために




銀杏の葉が散っていくように、人が去っていった。
お婆さんの紙芝居が退屈だったからだ。
そして、ほとんどの場合人々は忙しいというのが現実だった。
それでも、お婆さんはお話を続けていた。

     *  *  *

なんとそれは、巨人の靴だったのです。
ぷかぷかと歩く様子は、まるで亀のようでした。
これではバス停まで何時間かかるかわかりません。
マイペースで歩いていると、どこからともなく子供たちが集まってきて太郎さんに殴りかかりました。
逃げ出す暇もなかったのです。

「やーい、亀だ、亀だ!」

手に手にこん棒やヌンチャクを持って、当り散らしてきました。
まるで島中の子供たちが集まってきて、鬼退治をしているようです。
このままで太郎さんは死んでしまうでしょう。
そこで太郎さんは、得意のボクシングでいじめっ子をやっつけました。
太郎さんは、血気盛んな若者だったのです。
そうして無事にたどり着いたバス停から、港行きのバスに乗りました。
『ドラえもん』がないので、とても退屈でしたが少しわくわくもしていました。
ようやく裏の島から抜け出して、表の世界に行くことができるのですから……。
素敵な夢を見ながら、太郎さんは眠りに落ちていきました。
めでたしめでたし。

     *  *  *

猫のイビキに混じって、乾いた拍手が聞こえてきた。
見ると、随分離れたところで一人の少年が座っている。

「なんで、巨人の靴があったの?」

少年は少し首を傾げながら、近づいてきた。
お話はもう終わったのだ、と言いながらお婆さんは飴玉を手渡した。
少年は、お礼にと言ってランドセルから本を取り出すと人懐っこい笑顔を向けた。

「太郎さんにあげてよ!
 僕も太郎っていうんだよ!」

その横顔は、突然招かれた表玄関のように輝いて、お婆さんを元気にした。

太郎くんの贈った『ドラえもん』は、
時々、お婆さんをドラドラとした童心に帰し、
そして時々は枕となって、
猫を、のび太くんのように眠らせている。






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テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

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おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
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今日も散らばって行こう
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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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