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ブルーホール

巨大な硝子の箱の中には、作られた海があった。
猫は、本当の海についてあまり深く知らなかった。
作られた世界の中に、自分たちが存在していることも……。
幻の海の中を、ひらひらと泳ぐ小さな魚たちを必死で目で追った。
そして、時には頑丈な硝子に顔を近づけて爪を立てた。
きゅるきゅると滑って、何度かお婆さんに助け起こされた。

「時間がない。急ごうかね……」

二人でこっそりと忍び込んだ、水と硝子の空間にも、もうすぐお別れの時間が迫っているようだった。
猫とお婆さんは歩調を速めた。
視界に飛び込んできた、巨大な尾びれに猫は目を丸め宙を一回転した。
魚は悠々とターンして、猫の方に近づいてくる。

「ゼンベーザメだよ」

お婆さんが、耳元でつぶやいた。
お婆さんは、何だって知っている。
大きな生き物がいるものだ……。
猫は、小魚のように少し身を震わせていた。



きみがいるから
僕はここに
やってきた

秘密の足跡
誰も知らない
本当の理由

やっと見つけた

名前も知らない
僕の友達

今日もきみは さよならする
誰でも さよならするんだね

きみの通りすぎた
風が
冷たい


きみがいるから
僕はここまで
やってきた

秘密の決意
誰も知らない
僕の憧れ

いつも見ていた

名前も知らない
僕の目標

今日できみは さよならする
誰もが さよならするんだね

きみの通り抜けた
道が
ぽっかり




一つまた一つと館内の照明が落ちていった。
魚たちが、さよならも言わずに消えていく。
消えていくのは、幻だからだろうか……。
猫は寂しい思案の波に揺れながら、ゼンベーザメを見つめていた。
このゼンベエだけは、消えそうもなかった。
何度目かのターンを終えて、猫にまた尾びれを向けた。
ゆっくりゆっくりと遠ざかって行く。
そして、ついに硝子を突き抜けて、まるで何の障壁も最初から存在していなかったように進んで行くのが見えた。
猫は、思わず声に出して叫びそうになった。
けれども、お婆さんは名残を惜しむように、ゆっくりと手を左右に動かしていた。

「本当の居場所に帰って行くんだよ……」

それがどこにあるのか、猫にはそれを問う勇気はなかった。
ただ黙って、小さくなっていくゼンベエの尾を見つめていた。

その横顔は、硝子細工の海のように青く壊れそうだった。

目の前には透明なだけの空間。
そこにもう、海の面影はなかった。
先程よりも、また少し暗さが増している。
けれども二人は、なかなかその場所から離れられなかった。
ぽっかりと空いた穴に、
硝子の時間が吸い込まれていく。


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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

Comment

こんにちは

いつもありがとうございます。

僕には創造できない世界観をお持ちで、尊敬しています。
僕にはあーだこーだと子供じみた内容しか書けませんので…。

これからも素敵な作品を書き続けて下さい!

トクさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

自分らしい世界をつくるってなかなか難しいですね(笑)
トクさんは、哲学者のようです。
色々と、名言をもらっていますよ ^^

空っぽになるまで、続けます!
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Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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