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ここだけの話

会場には、100人を超える人が集まっていた。
熱心に講師の話に耳を傾けている。
「2010年火星移住計画」についてだ。

「もはや一刻の猶予も許されません!
 地球を抜け出す準備をするのです」

火星の砂を掃いたように、会場がざわざわとした。
どうやらこのまま行くと、海という海が沸騰し始めて海水浴に行けなくなってしまうらしいのだ。
それは夏という言葉の意味が、なくなるのと同じことかもしれない……。
確かに今年の暑さときたら、お婆さんの確かな記憶の中にあっても今までにない類のものではあった。

けれども、今はこの場所が暑くてもう耐えられそうもない。
人々の熱気のせいもあるだろう。
いや、きっとエアコンが全く入っていないのだ。
まだ話の途中ではあったけれど、猫とお婆さんは会場を抜け出すことを決めた。
ここは生き物の住める場所ではない。
二人は立ち上がった。



ここでしか聴けない
音色がある

ここでしか描けない
景色がある

ここでしか味わえない
味覚がある

ここにしかない優しさがある
ここにしかない空気がある

ここでしかとけない
謎々がある

ここでしか作れない
メニューがある

ここでしか描けない
物語がある

ここにしかない季節がある
ここにしかない自由がある

ここでしか生きれない
私がいる

ここで生まれ
ここで生きて
ここで生み出してきた

すべてのものが
私の中の宝物

世界が滅んでも ここでしか生きれない

私はそんな 生き物でしかない




エレベーターが開き、地上に降り立つとまた雨が落ち始めていた。
そうして一雨毎に秋に近づいていくのかもしれない。
猫とお婆さんの歩みと共に、見慣れた街並みが流れていく。
所々、畳む店、開かれる店があること等を除いては、
特に大きな変化はないように思えた。
今この地球上に起きている大きな問題を考えながらも、お腹がグーッと鳴る。
猫の目が、一つの看板に釘付けになった。

その横顔は、今ここにある正解を見つけ出した六年生のように光っていた。

二人は馴染みの店のドアを開けた。
お婆さんはバリバリ熟カレー、猫はマグロカツカレーを注文した。
ここは落ち着ける場所だ……。
やっぱり、カレーはココイチだね。






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テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

Comment

junsoraさん、こんばんは。
こちらにコメントするのは多分初めてです。

素敵なオチに思わずニッコリしちゃいました(笑

先程はコメントありがとうございました。
すっごく嬉しかったです♪
また是非遊びにいらして下さいねw

さくらさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

「ココ」「ココ」と歌っている内に、
だんだんカレーが食べたくなってしまいました^^;
人がおいしそうに食べていると、
不思議と同じものを食べたくなる……
それもまた憧れの一種だったりして。

また遊びにいきます ^^
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おかしな比喩を探し求める内に
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「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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