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掘り出し物

「確かに、この辺だったんだけど……」

お婆さんは、額の汗を拭いながら呟いた。
汗がプカプカと泡になって宙に漂う。
掘っても掘っても出てこない。

ここ掘れ、お婆さん!

猫が賢明な犬のように提案した。
お婆さんは、猫の声を信頼して鍬を傾ける。

掘って
掘って
掘って

猫が見守る中、掘り続けると、
土の中から何かが、
ザックザックと言いながら現れた。

潰れた空き缶、汚れた空き瓶、
外れた宝くじ、外せなかった知恵の輪、
渡せなかった切符……

「何だ、こんなもん!」

小さな溜息、
詩の欠片、初夢の残骸、
台無しになった宿題、
昨日の占い……

「役に立たないものばかり!」

枯れた恋心、
新年の決意の怨念、
忘れられた死語、方程式の不可解、
失われたチャンスボール……

「あの時、掴んでおけば良かったのに……」

お婆さんは、しょぼくれたボールを手にすると、
暮れかけたオレンジ色の夏に向かって、
投げた。

誰も見ていなかった。
猫を除いて、誰も。




誰にも見られず
埋もれているものを
僕は掘りたい

埋もれたままの
願いを
空に放したい

誰にも照らされず
誰にも見つけられず

じっと

埋もれているだけのものを
僕は掘りたい


どこまでも深く
埋もれていくものを
僕は掘りたい

埋もれたままの
痛いに
風を送りたい

誰にも知られず
誰にも気づかれず

ずっと

埋もれているものだけを
僕は掘りたい



忘れられたテロメアを
もう一度つなごう

消えかかった物語を
もう一度組み立てよう

遠ざかった名を
もう一度胸に描こう


大切なものが

そこに


そこに

眠っている



自分だけに掘り出せる
奇跡の塊を


僕は掘りたい





掘ることには、飽き飽きしていた。
掘っても掘っても求める結果が現れないことに、
腹が立ったのではない。
お婆さんは、腰が痛かったのだ。

掘り出されたガラクタを、一つ一つまた埋め始めた。
今度は猫も一緒に手伝った。
人一人がすっぽりと落ちるほど深く掘った穴の中に、
暗い暗い穴の中に、
モグラの独り言が、
実行されなかった録画予約が、
フランスパンの空耳が戻されていく。

苦虫の苦々しさと並んで、角の取れたアドレナリンが落ちて行くのを、
トカゲの嫉妬が少し邪魔をしたが、お婆さんが宥めた。
粒よりのひまつぶしの誘惑に負けて、
猫は少しの間、遊びにつき合った。
使い古された蛇口から人生の荒波が溢れ出てくるのを、
お婆さんは何とか手で押さえた。

そうして大方元通りに落ち着くと、
最後にお婆さんは、種を蒔いて土を閉じた。
猫は少し申し訳なさそうに、その様子を見届けた。

その横顔は、土葬に立ち会った猫のように静粛なものだった。

お婆さんは、何の種を埋めたのだろう?
謎めいて、
猫は少しわくわくした。




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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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