四次元の18番
2007-08-01 Wed 00:48
助っ人はいつも、僕らのエースになる。
残り3分で、僕らのチームは1点負けていた。
僕らは藁にもすがる思いで、彼にボールを預ける。
その日、僕らのエースは18番だった。

「18番だけだぞ!」

敵チームのベンチから怒号のような叫びが上がる。
的確な指示によって、18番は囲われるようになった。
まるでクラスの人気者のように……。

18番は、影のように体を伸縮させて敵の一人をかわした。
続いて2人、3人と寄って来る中を、波のように体を揺らしながら、
ボールを運んだ。
敵はただ付き人のように、着いていくのが精一杯で、
頼れる18番は、ボールを失わなかった。
二次元vs四次元のプレーであるように、
彼の足だけ別次元で跳ねていた。
3人を引きずりながらも放ったシュートは、惜しくもバーを越えた。

「18番だけだぞ!」

真実は、繰り返し連呼しなければならないというのか?
時間だけが吸い取られていく真緑の芝の上で、
僅か1点のビハインドが、巨人の足のように重くのし掛かっていた。
7月の太陽の下で、僕らは、
神頼みのような攻撃を、何度も繰り返した。
けれども、18番は敵全員に囲まれるようになっていた。
まるでアニメのルパンのように……。



 よく見てごらん
 僕もここにいるよ

 見えないか?
 気づかないか?

 ずっと前から
 僕は
 ここにいるよ

 告白するよ
 僕もここにいるよ

 知らないか?
 恐くないか?

 どこにも行かない
 どこにも隠れない
 憎まれたいほど
 ここにいるんだ

 初めから
 僕は
 ここにいるよ

 透明か?
 空気のようか?

 見逃しておきな

 最後に
 僕が

 飛び出して

 決めてやるから




終末の予感が、焦りを生み、
焦りが、ミスにミスを重ねさせた。
もしも、それがミスバーガーなら、誰も食べ切れないほどに……。
届くはずもないパスが、容赦なくカットされた。
18番は、まるで国境を越えた遠い場所に位置しているように、
僕らのスペースは悲劇的に分断されていた。

もう時間はない、
と思われたその時、僕は中盤でボールを持った。
左に流れて左足でシュートを打ってやる。
僕は決めた。心に決めた。
イメージ通りに、
左に切れ込んだ。
切れ込んだのはボールだけで、
体があと半分追いつかなかった。
最後のシュートは、僕には打てなかった。
そしてその時、終了のホイッスルが僕らの時間を止めた。

大人しく整列してチーム同士で握手を交わす。
けれども、不思議なことに、
相手チームは皆、18番にだけ手を差し出した。
その時、僕は悔しかったけれど、
本当のことを知って、
なぜか少しうれしかった。


彼らは、本当に、
18番しか見えていなかったんだな……。





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