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六月の風船

病院で悟空は空を飛んでいた。

「いつからあんなに飛べるようになったの?」

「成長したんさ」


「人間ってそんなに変わるもの?
 私たちは日々悪くなっていく気がする」

「宇宙人なんだよ」


「宇宙人っていいな~
 あんなに人間に似てるのに…」

   *    *    *

赤信号が夜の歩行を停止させている。

「高い、たかーい!」

父親が嬉しそうに、赤ん坊を抱きながら星を見せている。
赤ん坊は、母親の手先から伸びている風船に惹かれているようで、届かない手を必死で振る様はまるでバイバイしているように見えた。

「そんなに高くもないのにな。 本当は」

青信号が夜に許しを与えて、私たちは歩き始めた。

「私もあんなだったのかな?」

「誰もがそうよ」

   *    *    *

ようやく、お好み焼きはできあがりつつあった。

「あんた、何が欲しい?」

「何もなくなっちゃった……
 何もいらないよ」

降水確率は80パーセント。
明日は、一日中雨らしかった。
それでも私は、残さずに食べた。
店を出ると、降り始めの雨の匂いが立ち込めていた。

   *    *    *

大事な話の続きが夢の中にあったけれど、朝は冷酷な試験官のように慈悲の欠片も見せなかった。
それでも私は、懇願するように大事な一日の栄養素と引き換えに朝を待たせた。
そうして朝がぎりぎり枯れてしまうほどになった頃に、口数も少なく玄関へ自分らしき形のようなものを運んだ。
靴にはなぜか風船が括り付けてあって、私はそれを手に取ったまま駆け出した。
天気予報は見事にはずれ、朝からあり得ないような天気だ。
大きく膨らんだ風船に「元気玉」と書いてあるのを見つけて、私はおかしくなった。
空に見せびらかすように、持ち上げると風がそれを欲しがった。
交差点の真中に差し掛かったところで、私は風のリクエストに応えて風船を手放した。
六月の風が楽しげに手招きすると、風船は私を離れて空高く舞った。
高く高く舞って、遠く遠く、どこまでも遠くへと飛んで行った。
本当に、どこまで行くのだろう?
どこか見知らぬ街で、あるいは異国の土地で、誰かがまるでドラマのように偶然見つけたりするのだろうか……。

「ありがとう……」

誰にも聞こえない声で、さよならを言った。


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テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

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おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
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今日も散らばって行こう
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「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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