黒い翼『黒い翼』
2007-05-07 Mon 12:19
出口のないフェンスの中から、壮大な青の中に舞い上がった。
吠え立てる声も、今はもう聞こえなくなって。

「来るのが遅いじゃないか!」

しっかりと猫を抱きながら、カラスに文句を言う。
お婆さんはカラスを手なずけていたのだった。
えらいぞ! お婆さん……
猫は少し、見直した。



雄大な翼に包まれて
あの日
僕らは空を飛んだ

小さな家が離れていく
見る見る小さく
霞んでいく

人も街も遠く

失ったものは
夜のように大きい

黒い翼に運ばれて
あの日
夜空は僕らを抱いた

小さな世界が離れていく
小さな僕と
離れていく

友も敵も遠く

失ったものは
夜のように大きい

雄大な翼に誘われて
あの日
僕らは空を飛んだ




猫は思い出していた。
カラスに誘拐された月夜のことを……。
昨日のことだったか、それとももっと前だったか。
カラスは家の前まで二人を送り届けてくれた。
羽根を一枚落とすと、再び青空へと飛び立った。
猫は、憧れを込めて空を見上げていた。

その横顔は、失った青い鳥を探すように未練を残していた。

二人は月を見るたび、あのカラスを思い出している。
今でもお婆さんの家には、家宝のように飾ってある。
あの時の、美しい羽根が……。




さよなら
さよなら

黒い鳥

包まれた夜の中で
身動きも出来ず
僕らの遥か下で

世界だけが動いていた

さよなら
さよなら

未来鳥

今から僕ら
自分の意志で
歩いて行こう

さよなら
さよなら

きみの残した
大きな羽根を
振りながら

僕らは何度も
さよならと
唄おう

本当のさよならは

さよならも言わせないから

さよなら
さよなら

いつまでも
夜の残像に

僕らは
唄う


さよなら

さよなら








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