スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「キャッツ婆」集合

久しぶりに握るハンドルは少し重かった。
お婆さんは、猫のチームを乗せて運んでいる。
夕暮れの風が心地良く吹きつける車内、
猫たちは背番号を巡って、言い争っている。
出発して一時間が経つが、練習場にはまだ着かない。
海が見えはじめて、空気も少し和んだようだ。



どこまで行けば
僕たち
行き着ける

わからないまま
進むしかないの

どこまで話せば
僕たち
落ち着ける

わからないまま
話すしかないの

どこまで行けば
僕たち
一息つける

わからないまま
生きるしかないの

どこまでも
どこまでも

生きるしかないの

どこまで離れれば
過去は
見えなくなる

わからないから
逃げるしかないの




練習場に着いた時には、もうすっかり夜だった。
けれども、猫たちは月と共に輝き降り立った。
キャットサルチーム「キャッツ婆」の紅白戦だ。
お婆さんの猫は、10番をつけたため理不尽なマークが集中した。
ボールを受けた瞬間二人がかりで倒されてしまった。
猫はひっくり返ったまま、お婆さんの方に顔を傾けた。

その横顔は、夜を転げ落ちた栄光のようだった。

猫は、怒りながら起き上がった。




後ろから
こそこそと
つけ狙ってはいけない

堂々と
正面から行きなさい

後ろから
追いかけて
引っ張ったりしてはいけない

正当に
ボールに行きなさい

見えないところで
悪さをしてはいけない

目を見て
ハートに行きなさい

そうして奪われたら
こっそり
褒めてあげよう




猫はお婆さんに褒めてもらいたかった。
ディフェンスの猫3人を引きずりながら切り裂いた。
中央突破から左足で強烈なシュート……。
けれども、シュートは空振りだった。
猫はその場に倒れこんだ。
ひっくり返ったまま、お婆さんの方に顔を傾けた。

その横顔は、幻のゴールのようにおぼろげだった。

猫は、怒りながら起き上がった。
いよいよ熱くなってきた。



熱せよ
メラメラと
熱い魂を

熱せよ
コロコロと
転がらぬ内に

熱せよ
打ちのめせ
弱き心を

熱せよ
今ここで
逃げ出さぬ内に

熱せよ
フラフラと
彷徨う夜を

熱せよ
雨も
零れ落ちぬほど

熱せよ

きみと
ぼくと

災厄を
蹴り上げて

熱せよ

すべてを
振り払って

何もかも
傾けて

熱せよ




キャッツ婆の紅白戦は熱っぽく続いた。
それから急速に冷めた後、監督の下に集合した。
お婆さんは良かった点、もうひとつだった点を説いた。
けれども、猫たちはあまりにも無関心だった。
帰りの車内、夕暮れとは打って変わって静かだった。
10番は燃え尽きたように、お婆さんの膝の上で眠っている。

その横顔は、ようやく落ち着いたボールのように丸かった。

明け方の心地良い風の中で、猫の寝息だけが聞こえる。
朝日がゆっくりと、10番の背を照らし始めた。





スポンサーサイト

テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

Comment

非公開コメント

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
リンク(相互、片道、色々…)
最近の作品
最近のコメント
プロフィール

junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

最近のTB / 返詩
そんなカテゴリー
折り返し地点

『折句ストレート』

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

フリー素材のある場所

・天の欠片
・e-素材web
・素材屋さんromance.com
・アイコンワールド




RSSフィード
月別アーカイブ
フリースペース

フリー百科事典
『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。