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お婆さんリサイタル『最後の歌』

ステージの上を、猫が見守っていた。
お婆さんリサイタルの、たったひとりの観客だ。
最後の歌の時が近づいてきた。
どんなものでも、最後は少し寂しいものだ。
どんな歌だろう……。
猫の鼓動は、少しずつ高まりつつあった。
そして、お婆さんは歌い始めた。





最初のように
あのまま
あの場所にいたならば
私は今どこにいただろう

時間は無限じゃないと
わかっているはずなのに

あと少し時が早ければ
あと少し時間が遅ければ

途中までのように
あのまま
あの場所にいたならば
私の今はどこにあるだろう

自然は限られていると
わかっているはずなのに

もう少し勇気があったなら
もう少し器用さがあったなら

あの時に
あの場所で

わかっているはずなのに
それでも涙は止まらない

私は私は私は

想像で語れる風景は
壮大な自由と
未知の色使いで
塗り描くことができるから

現れるのはファンタジー
想像上のファンタジー

あの日の笑顔と
昨日までの道程を
嘘のように飲み込んで
飛び立ったのは別世界

結末の消えた夢物語の中で
架空の登場人物の表情は
氷の中の本のように固く

あのままだったら
どうだっただろう

きっとそれは
どうだっただろう

想像だから言えること
だからそう言えること

私はどこにいただろう

最後になればわかること






最後になっても、猫はわからなかった。
お婆さんの歌の意味がよくわからなかった。
眠たかったわけではない。
ここにいる誰よりも、よく聴いていた。
猫は自分の後ろに、誰もいないことを知らなかった。

お婆さんの消えたステージを、しばらく見たまま動かない。
意味はわからなかったが、少し痛く哀しくなった。
けれども、針の雨が降り注ぐような痛みではなくて……。
猫はまた、お婆さんの歌を聴きたいと思った。

その横顔は、最初で最後の理解者が描き出す優しさそのものだった。

それからお婆さんは、どこかから拍手の音がするのを聞いた。
それは、猫によるアンコールだった。




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テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

Comment

ぱちぱちぱち(拍手)

そんなお婆さんにスタンディングオベイション!!
アンコール♪

ありがとうございます

イーゲルさん、コメントありがとうございます。

お婆さんも、驚きながらきっと喜んでいると思います!
持ち歌が尽きていようとも、アンコールに応えて、
きっと戻ってくることでしょう♪
優しい拍手の音に感謝しながら……

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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