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お婆さんリサイタル『ひとりいた』

ステージの上にお婆さんは一人。
けれども、もうひとりきりではなかった。
猫が、真冬のヒマワリのように客席に咲いている。
たったひとり、けれど眠りもせずに……。
だからお婆さんは、勇気を取り戻し歌うことができたし、
だんだん声も出るようになってきたのだ。





ゼロの中からひとつだけ
見えてきたのはひとつだけ

それは似ているようで

ONとOFF
虚無と夢

白と黒
静と動
空と海

ゼロの中からひとつだけ
見えてきたのはひとつだけ

その隔たりは
近くて遠くて

光と闇
沈黙と笑顔
空ときみ

ゼロの中からひとつだけ

きみのいちは
いまとなり

きみのいちは
永遠となり

ゼロの中から現れた

輝いたのはきみひとり






猫の目が一番星のようにキラリと輝いた。
輝くものは他になかったのだけれど、それは兄弟星のように二つ並んでいた。
お婆さんは水を一口含み喉を潤した。
ガラガラの客席に向かって、発表する。

「これで最後の歌になります」

もうおしまいか……
猫は少し不満げに眉間に皺を寄せた。
その横顔は、打切られた連載を前にした読者のひとりのようだった。
もう、最後の歌か……。



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テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

Comment

おばあさんのリサイタルに アンコールを!
なんだか猫の後ろからこっそりのぞいたような気分になりました。

ありがとうございます

あおはさん、コメントありがとうございます。

猫の後ろに、ほんとに誰かいると嬉しいですね。
お婆さんは、シンガーソングライター(?)として、
リサイタルをするには持ち歌が少なすぎたのかも^^;

アンコールありがとうございます♪
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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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