月追い
2006-09-29 Fri 00:35
月があまりに近くに下りてきた。
猫は光のような速さで追いかけた。
もうすぐ追いつけるだろう。
そして飛び乗ることができるだろう。
月はあまりに明るく輝いていた。
だから猫は照らされるように、引きつけられるように走った。

「もうすぐそこだ…」

けれども、月はあまりに突然にあまりに速く流れ始めた。
猫は走るのを止め、路上駐車の車に飛び乗った。
車の上から眺める月はもう遠かった。
手を伸ばしてももうそれは遠かった。
池に逃がした金魚を見送るように猫は月を見ていた。
その横顔は、遠ざかる月明かりの中で幻のように消え入りそうだった。



太陽を向こうにまわして
逃げ落ちてきた

9月になれば
月も向いてくるだろう

この月の下に
生れ落ちてきたのだから

夜をつきとばして
小さな手をかざしてみる

美しすぎる光も
ただ見上げているだけでは
何も変わっていかない

この街では月を探すにも
かけ回って見つけなければ

一瞬の微笑みならば
満たされた瞬間に
振り出しに戻ってしまうから

太陽を向こうにまわせば
月はこちらにみえてくる

この月の下に
ねがいかけてきた

夜につきそって
小さな手を合わせてみる

儚くすぎる光を
ただ想っているだけでは
何も伝わっていかない

この街では月を見つけるのにも
かけた心を合わせ集めなければ

ひと時の幸福ならば
満ち足りた瞬間に
欠け始めているものだから

9月が過ぎれば
月は逃げていくのだろう

一粒の光を残して
逃げていくのだろう

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