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ないもの想い

「じゃあね…」
おばあさんが出て行った家の中に、猫はポツンと座っていた。
さっきまでそこにいたはずのおばあさんは、いまはもういない。
さっきまでおばあさんが座っていた椅子には、いまは誰もいない。
さっきまで聞こえていたおばあさんの歌声も、いまはきこえない。
それはみんなおばあさんのせいだ。
おばあさんは、猫と空白だけを残して行ってしまった。
猫は、おばあさんがおやつを抱えて買い物から戻ってくるのを待ちわびていた。
その横顔は、消えた夏空を想うひまわりのように萎れていた。



そこにないものが僕らには見える

もうあなたは消えてしまったけど
時々あなたがそこにいるように見える

椅子の上に誰もいないけれど
時々あなたが座っているのが見える

そこにないものが僕らには描ける

ぼんやりした曇り空だけど
そこに僕は雪を描いてみた

雪ははじまりのように白くて

それは希望

それは期待

それは郷愁

どれも冷たく溶けていくものばかり

そこにないものを僕らは想う

空っぽの水槽の中に
僕は金魚を想ってみた

尾びれは木の葉のように揺らめいて

それは幻想

それは不安

それは愛情

どれもただ揺れているものばかり

空洞の中に忍び込んだ空想がいまだけを満たす

もうあなたはいなくなってしまったけど
跡形もなく消え去ってしまったけれど

なぜか時々形をつくらずあらわれて
密やかに僕を引きずり込もうとする

望もうと望むまいと

そこにないものだけを

今また僕は想う


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テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

Comment

自分の中に残ってるものが形として見えたり、そこから想いのままに発展して動いたり、、、
空想できるって不思議ですね。

「消えた夏空を想うひまわりのように」・・junsoraさんの比喩は、やっぱりさすがに素敵☆

ありがとうございます

レニさん、コメントありがとうございます。

空想って不思議ですね☆
ありもしないものをあるように想ったり、想い出したり…
それは人を楽しませ、時にはかなしくさせてしまうこともあるけれど、やはり必要だし素敵なものなのだと思いますvv

横顔比喩に着目してもらってありがとうございますv
そう言ってもらえるとうれしいですね^^;

元々「そんな横顔」って謎の比喩一行だけとかそんなこともやっていました。
今ではその一行は何のためにあるんだろう?…という時もありますが(笑
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junsora(望光憂輔)

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おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

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「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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