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流される日々

さらっていったのは風。
さらわれたのはおばあさんの帽子。
川に浮かんだ奇妙な形の帽子は、ゆっくり流れていく。
おばあさんは口をあけて無言の悲鳴をあげている。
けれども、帽子は距離をあけておばあさんから離れていくようだった。
猫が駆け寄って、手を伸ばすと必死に帽子を威嚇してみせた。
「おい! おい! ちょっとおい!」
猫の不思議な動きにも帽子は動じる素振りもみせず、それはまるで小さな舟のように、不意に始まった旅ではあるけれどもう呼び止めても戻ることはないのだった。
追いかけながら、時に先回りしながら猫は対話を試みる。
その横顔は、流れることを知らない星のように直向だった。



風にさらわれて
流れていく帽子のように

流されるのは誰だろう

関心の度合と他人の反応に
賽銭の金額と抽選の結果に
最初の報道と最新のスペックに

振り回されるのは誰だろう

一人の愚か者と判決の行方に
一枚の紙切れと看板の見せ方に
一瞬のスピードと照明の当て方に

流されるのは僕だろう

身勝手なルールと作られた順位に
古びたマニュアルと与えられた制服に
気まぐれなタイミングと乗り合わせた隣人に

いつも振り回されるのはなぜだろう

意志を固めた自分を持っていても

川に浮かんで
逃げていく帽子のように

流されるのは誰だろう

逃げ込む占いとみせかけの笑顔に
染み渡る音楽と壊れかけた優しさに
過ぎていく夕暮れと離れていく友達に

自分で選んでいるはずなのに

いつも揺れているのはなぜだろう

最初の挨拶と降り始めの雨に
消えていく語尾と暮れていく空に
何気ない一言と何気ないそよ風に

みんな持ち運ばれて

いつかみえなくなる帽子のように

流れつくのはどこだろう

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テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

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「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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