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遠ざかる距離

本当に長い夜だった。
その夜はまるで一週間のように長く感じられる。
そんな夜…
おばあさんは、ちゃんと眠れているのだろうか?
猫は少しの間、唄うことを止め置いてきた世界のことを振り返った。
疲れた喉を気にかけるように、後ろ足で何度も首をさすってみる。
「いったいどこへ?」
唄は、届いた感じが今日もしなかった。
自分の声の小ささに少し気が滅入った。
夜が終わるまでにまだ唄わなければ……
けれども、夜はもう猫の声ほどに消えかかっている。
猫は別れのバラードを唄い始めた。
その横顔は、溶け始めた夜と共に明るさを増していった。
夏の朝が迫ってきた。



あなたのことを好きだけど
時々私は離れていく

あなたの唄が好きだけど
ずっとそばにはいられない

もう一度近づくために
今はあなたとさよならする

冷めたわけではない

だけど私は進まねばならない
本当の自分を探す旅の中へ

あなたの唄を聴きたいけれど
私は私を唄わなければならない

忘れたわけではない

だけど私は探さねばならない
私が唄うべき唄が眠る場所を

最初に私はひとりだった

だから時々ひとりでなければならない

あなたの唄を想うけれど
もう一度唄い出すために
時々元の場所を思い出さねばならない

逃げるわけではない

もう一度近づくために
今は少し離れなければならない

あなたのことを想うけれど
もう一度思い出すために
時々ひとりの場所に帰らねばならない

消えるわけではない

もっとあなたに近づくために
今は少し寂しくならねばならない


あなたの唄を好きだけど



だから私は離れていく



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テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

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「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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