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ミシン目の世界

おばあさんのミシンが立てる静かな騒音も、雨の音が清らかな心地よさでかき消して、猫は今日一日の雨音をすべて記憶しようとするかのように、耳を動かしていた。
おばあさんが手を止めると、ようやくできあがった着物を広げて見せた。
「さあ着てみせてごらん…」
猫の好きそうな、春色の優しい感じのセーターを見る猫の目は好奇に見開かれていた。
その横顔は、ミシンで縫いつけられたワラビ餅のようだった。


ミシン目に沿って
ちぎれそうな夜を歩く
誰かの残した
傷跡のように深く
過去を美化した
色紙のように赤く
切り裂いて
あと一歩で
世界の隙間に
落ちていく

ミシン目に沿って
破れそうな夜を歩く
あなたの残した
爪跡のように深く
雨が交差する
歴史のように儚く
導いて
あと一歩で
世界の隙間に
落ちていく

それでも夜は
引き返せない
不変の時は
世界の汚れた隙間を
欠けた煉瓦で埋め尽くす

だから私はミシン目に沿って
凍りついた奇跡の後を
いまも私はミシン目を追って
こぼれないように
見失わないように
歩いてく

灰色の壁に
あなたの似顔絵を
描きながら
あなたの約束を
地の底に
縫いつけながら
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Comment

ミシンで縫いつけられたワラビ餅・・・これは普通の人は思いつかない表現です。さすがです。そうぞうすればするほど・・・なんですが(笑)
ミシンで縫ったミシン目と、書類を切り取るためのミシン目を上手く使って、切ったり落ちたり沿って歩いたり。巧みすぎて身震いが・・・。
最後に   あなたの約束を 地の底に 縫いつけながら   ときたので、なんだか私もこの作品に縫いつけられてしまいました(笑)
これとっても好きです。

ありがとうございます

あおはさん、コメントありがとうございます。

ワラビ餅(笑…) 横顔の始まりは、どれだけシュールな横顔をみせるかというテーマがありました。
原点を思い出させてもらったような気がします。滑稽で切ないというのが一つの理想の顔なのですが…。

ミシン目という言葉が妙に気になって、退廃的な危なげな世界観のイメージの詩です。
自分では気に入っているけれど、こういう感覚的な詩って、人の目にはどう映るのかなというのは、
いつも謎ですね ^^
だから、気に入ってもらえてとてもうれしいです。そして、励みになります。
また書いてみたいです、こういった詩を…
縫いつけられてしまって(笑)、ありがとうございますvv
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junsora(望光憂輔)

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おかしな比喩を探し求める内に
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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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