スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

3秒と少しの空

オオクボ選手が空へ飛んだのは3秒前のことだった。
そして、誰もがボール見失っていた。
お婆さんは、最初の1ページを開いた。
ページをめくる毎に徐々に平凡な日常から離れて、行ったことのない異国の地や、行くことのできない遠い宇宙を旅する。
主人公はそこで非凡な問題、切実な悩みを抱え、数奇な運命に翻弄されながら時に勇敢に、時には命の危険にさらされながらも、頼もしい仲間と素敵な偶然とお婆さんの応援の力によって生き抜いていくのだった。半分読んだ頃には、お婆さんはもう日常の大半のことを忘れているのだし、心はほとんど主人公に奪われているのだ。
お婆さんの読んでいる本は、SF冒険ミステリー恋愛ホラー小説、今時珍しい紙で出来た本だった。

オオクボ選手が空へ飛んだのは3秒前のことだった。
猫は、自分の隣にいるシャムネコの姿をみて驚きを隠せなかった。
「かくれんぼしないかい?」
シャムネコの言うがままに猫はシャムネコと一緒になって遊んだ。
本棚の上、テーブルの下、お婆さんのポケットの中、カーテンの裏側、テレビの向こう側、冷蔵庫の反対側、ありとあらゆる場所、お婆さんの読んでいる本の間、部屋の真ん中、まるで忍者屋敷で学ぶ忍者の基本的な授業のように、繰り返し隠れ合い、見つけ合った。
時々、お婆さんの世界の中にも立ち入って邪魔をしてしまったけれど、猫はシャムネコにそれはもう夢中だった。
自分よりもとても美しかったシャムネコ、
今まで見たどんな猫よりも美しかったシャムネコに……。



キミが空を
飛んでいる間
僕は時の間を
彷徨って

見知らぬ主人公と
ルーレットを廻す

ハラハラと
冒険の旅は
いつも夏のよう

キミが風を
抱いている間
僕は時の下に
潜り込んで

見知らぬ猫と
ムササビになる

ふわふわと
恋する旅は
いつも春のよう


もうすぐキミはおりてきて

さよならを告げる
ハッピーエンドは

3秒と少し




オオクボ選手が空へ飛んだのは3秒と少し前のことだった。
お婆さんは、最後のページを閉じるとあさっての方向を見つめた。
主人公はお婆さんが熱心に応援したおかげもあって、闇に包まれた多くの謎を解き明かし、見事に世界の秩序を取り戻したのだけれど、最後の最後に空から落ちてきた巨大なマシュマロに当たって死んでしまうのだった。きっとそれはお婆さんの知らない遠い宇宙から飛んできた隕石の一種だったのかもしれないけれど、お婆さんには何か納得のいかないものだったし、少しだけ作者のことを恨みもした。
物語は、いつも期待とはちょっと違う方向に進む。

オオクボ選手が空へ飛んだのは3秒と少し前のことだった。
2つの生き物は、隠れるところがなくなるまでかくれんぼをして遊んだ。
その間、シャムネコは猫と友達になり、猫はシャムネコに恋をしていた。
ムササビごっこをしながら、いつまでもこの時間が続くことを願った。
けれども、猫の飛行時間は思いのほか短かったのだ。
お婆さんが本を閉じた瞬間、猫は音も立てずに着地した。
すぐ横にいたはずのシャムネコの姿を、お婆さんの瞳の中に探した。

その横顔は、恋のムササビ飛行を終えた猫の操縦士のようだった。

ボールを見つけたオオクボ選手が頭で合わせると、地上に下りて来た。
アクオスの中で、わーっと歓声が沸き起こる。
シャムネコのような速さで、何かがネットを揺さぶった。
猫は、お婆さんにもたれかかりながらゴールを見つめた。
3秒と少しの時間を思い出す。




スポンサーサイト

テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

最後の日曜日

 *決定的一日

世界最後の日が、日曜日に決まった。
最後だから、本当に終わってしまう。
「日曜でよかったよ。あの人と顔を合わさずに済む」
「でも、ちょっと寂しいんじゃないですか? 最後ぐらい……」
馬鹿なこと言うな、と、村川さんは笑う。寂しいわけない、と。
神様はなぜ、世界最後の日を日曜日に決めたのだろう。


 *挨拶

「あ、こんちは」
すれ違いざまに、挨拶される。
「こんにちは」
顔を上げると目が合ったので、とりあえず挨拶を返した。
けれども、まったく知らない人であった。
もう会うことも、ないだろう。


 *生きている

ぎんちゃんが死んだ、ときかされた。
勝った時は、最高にうれしそうだった。
負けた時は、下を向いて動かなかった。
それでも、まだまだだと言った。まだやるぞと言った。
勝った時だけ、たまにごちそうしてくれた。
ぎんちゃんは、やっぱり生きている、ときかされた。
噂にすぎない話であった。
今も世界のどこかで、歩き笑い、勝ったり負けたりしながら回っている。
世界のどこかで。


 *ボレーシュート

試合中に芝を刈るのはやめてほしい。
選手たちは抗議しながら、ピッチの空いたところでボールを追っている。
狭いスペースで競り合いになるため、いつになく厳しい試合であった。
芝を刈る時間くらいいくらでもあるだろう……。
そう言う選手もいたが、いくらでもあったのはとっくに昔の話である。
すっかり時間は歪んでしまったのである。
今日の試合は、前半だけで打ち切られることになった。
誰一人、選手もサポーターも何者も出し惜しみするものはない。
早くもやって来たロスタイム、ゴール前に緩やかなアーリークロスが入る。
ニシザワ選手は当たり前の如くボレーシュートを放った。
止めている暇なんて、ないのだった。


 *知りたいの

「夢十夜って知ってる?」
「知らない」
「パレードはどこでやってるの?」
「知らない」
「CAS冷凍はおいしい?」
「知らない」
「キズパワーパッドは早く治るの?」
「知らない」
「カラフルは何色?」
「知らない」
「チルドレンは何歳?」
「知らない」
「物語はいつ始まるの?」
「知らない」
知らないと言うと、ミナちゃんは質問を変えた。
知っていると言ってもそれ以上は訊かない。
次から次へと、質問をぶつけてくるのだった。
「ロボット三原則は何と何?」
「さくらはいつ帰ってくるの?」
「次の開催地はどこなの?」
「六番目の小夜子は何番目?」
「マイクロトマトは何センチ?」
「地球は今日で何周目?」
「台風の目は何を見てるの?」
「ジョニイへの伝言は届いた?」
「なんで、そんなこときくの?」
「知りたいの。私、知りたいの。もっともっと知りたいの。
 知れる間に、知りたいの」
ミナちゃんは、泣きながら知りたいと言った。
知りたいというだけで、知りたい理由は置いてきぼりなのだった。
答えるだけは、とても疲れる。ついには嫌になる。
「もずくとめかぶとどっちがおいしいの?」
もう、どっちでもいい。
どっちでもいいし、どうでもいい。
質問攻めに疲れて逃げる。


 *ホテル

終末に近づいたホテルは、いっぱいだった。
フロントの人は、特別に従業員控え室を用意してくれた。
「申し訳ないので、安くしておきます」
ただというわけにはいかないようだった。
従業員控え室のソファーでくつろいでいると、従業員男と従業員女が手をつないで入ってきた。それから二人は人目をはばからず唇を合わせた。咳き込んで自分の存在を気づかせようとすると、何この人という目で従業員女に睨まれていたたまれない心持になる。従業員同士の引継ぎはできていないのであろうか?
従業員男と従業員女は何度も唇を合わせた後、互いに制服を脱いで裸になり激しく抱き合った。抱き合いながら、崩れながら床に落ちて、更に強く体を合わせるのであった。世界最後の夜のように、二人は愛し合っている。
二人の営みを眺めているのは、思いの他寂しく、屋根裏部屋かボイラー室にしてらもらえば良かったと深く後悔する。
せめて電気を消してくれればいいと思うが、まったくそうした様子はない。
ソファーにうつ伏せになって、無理やりに眠ることする。


 *最後の日曜日

村川さんが、来ていた。
「村川さん、今日日曜日ですよ」
そうだったか、と村川さんは寂しい顔をしている。
「世界最後の日ですよ」
そうだったか。村川さんは、木曜日のような顔をしている。


 *次の月曜日

何事もなく、月曜日がやってきた。
みんなは喜んだ。喜び方はそれなりだった。
そして、何人かは世界が終わったような顔をしていた。



テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

絵になる猫

順路をたどって歩いた。
一つ一つの絵を遥々と見上げる。
絵の中には、それぞれに風景があり世界があり物語があり、猫はその中に入り込んではしばらくの間、自分が猫であることを忘れてしまうくらいの間、うっとりと見入っているのだった。森が深ければ更に深く入り込んで秘密の森を探しにいき、空が青ければ青さの中に溶け込んでどこかにあるはずの雲を探しにいき、見たこともない食べ物が盛り付けられている時などは一つ一つ匂いを嗅ぎ、舌を出してみた。
けれども、そのすべては絵の中のことだ。
ふと我に返ると、猫は、自分がどこにも行ってなくただ首がずいぶん疲れてしまったことを知るのだった。
くるくると首を回し、ついでに体も回し、猫としての自分を取り戻す。
そうして再び、歩き出し、歩き出しては立ち止まることを繰り返す。
他の人間たちも、きっと同じようにそうするのだろうか?
猫にとっては、ちょっとした謎であった。



小さな足跡重なって
重なって重なって
いつか真っ黒い
夜になった

星をつかって
描いたら
きっと誰かが
見つけてくれる

夏が消えるまでに
きっと誰かが

小さな傷跡重なって
重なって重なって
気がつくともう
朝になった

雨音だけで
奏でたら
きっと誰かが
聴いてくれる

雲が消えるまでに
きっと誰かが

いつか
順路を見失う
時が訪れても

生まれたものは
おいていく
ひとつの風を

小さな涙が重なって
重なって重なって
空より透明な
絵になった

逆行するしか
ない時に
きっと誰かが
わかってくれる

道が消える前に
きっと誰かが

いつか
出口しか
見えなくなっても

生まれたものは
生きていく

生まれたものは
生きていく




一つの絵が今まで以上に猫の目に留まった。
帽子の女が小さな猫を抱いて椅子に座っている。
思わず猫は、あっ、と叫び声を上げるところだった。
なぜなら、それはかつての自分の姿に違いなかったし、それが絵として残っていること、この場に飾られ大勢の人々の目に触れられていることに感慨を抱きながらも、いったい誰がいつの間に描いたのか不思議でならなかったからだ。
猫は、飛び出しそうな「あっ」をなんとか呑み込んだ。
帽子の女は、お婆さんその人だった。
お婆さん……。
猫は、消えたお婆さんのことを思い出して、いつも以上に真っ白になった。

その横顔は、絵の中のみどりに落ちた露のようにぷるぷると震えていた。

ようやく訪れた出口。
本来ならそこから出て行くのが道理であった。
けれども、猫は少しも迷うことなく引き返した。
かっこいい制服を着た男が追いかけてくるのは、きっと猫の応援団に違いなかったけれど、猫は足を緩めることはなかった。
絵の世界から解き放たれた猫、人々と逆の方向に走る猫は、いつもどおりの猫だった。

ほどなくお婆さんを発見する。
それはほとんどまだ入り口に近い場所であった。
3番目の絵の前で、降ってくる餅を待つ時のように、お婆さんは立ち尽くしていた。
猫も、お婆さんの隣に座り、再び遥々と絵を見上げた。
2度目に見るそれは、またどこか違った世界にも見えてくるのだった。
閉館の時が迫ってきていた。
けれども、猫とお婆さんはまだまだ動かない。
まるで、絵になったように動かなかった。



テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

カレー・ノスタルジア

「プロと専門家ってどっちがうまいのかな?」
「そりゃプロでしょ。プロ中のプロだもの」
「えー、でもでも、
 専門家の人は、そればっかりやってるんだよ!」
「うーん、難しいなあ……」

見知らぬ人の疑問が、風に乗って猫の耳元にも届いた。
お婆さんの肩の上で、猫は無関心を装いながら密かに小さな頭を回転させる。
街にはいつだって素朴な疑問があふれていて、その一つ一つを集めては解決したり投げ出したりするのが猫の大事な努めの一つだった。猫は、街の声がよく集まる場所についてよく知っていた。それは、猫駅長のいる駅、おばあさんたちが集う待合所、ボールかぴょんぴょん跳ねる公園、そして誰もが足を止めなければならない場所だ。
信号が青に変わって、みんなが一斉に歩き始めた。
猫とお婆さんは、横断歩道を渡ってすぐの店に足を踏み入れた。

カレー専門店。だからメニューはカレーしかない。
お婆さんは特製ヤングカレーを、猫はシェフの大いなる気まぐれカレーを注文した。
シェフは、全身を輝ける白さで装っていて、猫はその白さにとても親近感を覚えながらも、その一番上の大いなる謎の部分にすっかり心を奪われてしまった。
まるで白い巨塔のように立ち上がった帽子は何だろう?
一体その中に何を秘めているのだろう?
特別な個室になっていて誰かが秘密の会議をしているのか?
小人たちが小さな野菜や果物を育てているのか?
未開の森が、どこまでも緑豊かに開けているのか?
あるいは依然として頭の一部であり続けているのか?
幾つもの想像の中に、可能性は無限に広がっていくように思われた。
けれども、シェフは静かに遠ざかっていった。



人の知らない
丘の上からこっそり
世界を眺めれば

何もかもが
小さく小さく
なった気がする

昨日の僕は
その中にいたんだ

人が忘れた
塔の上から静かに
世界を見下ろせば

何もかもが
遠く遠く
なった気がする

昨日の友は
その中にいたんだ


おーい みんな!

世界の中で 世界は見えるかい



届かない距離だから
思い切り叫べた今日

明日は どこに登ろうか


そうだ

キミの 帽子の上がいい




「ふぁー、からーい!」
お婆さんも猫も、思わず声に出してしまう。
一口食べるごとに、全身の毛穴という毛穴から汗が噴き出してくるけれど、その甲斐あってお婆さんはみるみる若返り、元気になっていった。
はっきりと、今10歳は若返っていた。
そして、猫はシェフの気まぐれすぎるカレーの中で溺れそうになりながら、必死に闘っていた。
まったく、どこまでも気まぐれな気まぐれなカレーの中で……。

「マルボロ・メンソールひとつください」
「はーい!」
お客さんに呼ばれて、厨房の奥から、再びシェフが現れた。
カレー専門店は、実は煙草屋も兼ねているのだった。
それでも、カレーの味にけちがつくなんてことはないことを、誰よりも猫とお婆さんの口が知っていたのだ。
無事にマルボロを手に入れると、高校生らしき少女は帰っていった。

白いシェフは、厨房に戻ることはなく色とりどりの煙草たちが並ぶ窓からじっと外の様子を眺めていて、その白い帽子をじっと眺めているのが猫だった。
突然、シェフは、そんな猫の視線に気づいてか、あるいはそれとは違う何か別の理由だったか、とにかく両手で頭の上を押さえた。
そして、ゆっくりと玉手箱を開けるように帽子をとったのだ。
そこに浮かび上がった光景は、猫の想像していたどれとも被ることはなく、ほとんど次元さえも違うものだった。
ああ、なんという、なんという……
猫は、ただただ驚き、言葉を失くし、目を丸くした。
自分の想像力の浅さ、世界の広さをまた一つ思い知る。
ねえ、お婆さん……。
お婆さんは、まだまだカレーを食べ、またまた若くなっていた。

その横顔は、音のない教室で永遠の給食を食べる少女のようだった。







テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

夏の闇

それにしても、やけに暗い。
ただ暗いだけの道は、少しだけ首筋を冷たくした。
金網の向こうに最初に現れたのは、猫だった。
お化け屋敷など所詮は子供だましである。流しそうめんくらいに涼しくなればいいのである。
猫は気配を察すると振り返り、そのまま動かない。
首だけを後ろに向けた姿勢は人からすれば少し無理が入っているような気がするが、猫にとってはそうでもないのか表情一つ変えず目を輝かせている。
なぜ、猫なのだろうか? たまたま迷い込んでしまったのか、それともここで働いているのか、捕らわれているのか。もしかすると、あれは猫のように見えて猫ではないのかもしれない。そう考えてみれば動きがどこか猫離れして見えなくもない。
確かめたくて、もう少し近寄ってみようとすると猫はぷいっと顔を背けて、奥の方へ消えてしまった。猫が消えるとまた暗闇が深まった。

謎を残したまま歩いていくと、暗い道が続く。
所々にあるローソクの灯りを頼りにゆっくりと進む。地面がやけにぬるぬるとしている。まるで雨を吸い込んだ泥道のようである。靴が汚れてしまうのが心配であるが、外の世界に出るまでそれを確かめる術はない。転んでしまわないように、少し大股になって歩く。

次の光で現れたのはお婆さんであった。お婆さんは、薄暗い光の中で灰色の布切れを纏っていた。そして少し苦しそうに地面に四つん這いになりながら筆を握っていた。長く乱れ伸びた髪が顔を覆い隠し、その目を見ることはできなかったが、お婆さんは確かに苦しそう、あるいは泣き出しそうに見えた。縦に大きく広げられた白い紙に向けて、今まさに何かを書こうとしているようであった。
けれども、いつまで待ってもお婆さんは書き出さない。書くべきことを忘れてしまったのだろうか。それとも本当に苦しくて書けないのだろうか。
やがて筆の先から、ぽつりぽつりと墨が垂れてきた。それは赤く、赤く、まるで血のように赤かった。
気持ち悪くなって小走りに駆け出したが、ぬるぬる道が邪魔をする。
ぴちゃぴちゃと音が、あとをついてくる。それは水を食べた泥の音、あるいは赤い墨の音であった。
お化け屋敷。
その横顔は、何人も決して足を踏み入れてはならない魔物の庭のようであった。



どこへ続くか
闇深き道の果て

誰も知らない
罪深き闇の果て

怖い怖い
こわい

わからない
からこわい

何が待つのか
何ゆえ待つのか

すべての隣人は
いなくなってしまった

天空に浮かぶ
銀色の廃墟で
笛が鳴る

怖い怖い
こわい

人間は
子供は
こわい

わからない
からこわい

かつては
誰もが
通った道だ

おそるおそる
振り返る猫

道は
限りない







闇を追いすがってくる音がしなくなると、徐々に道は明るくなった。
そして目の前に現れたのは小さな教室だった。

「夏休みの自由研究は何にする?」
「カブトムシの価格変動について?」
「もうすぐ戦争が始まるんだぞ」

「読書感想文はどうする?」
「ハリーにする指輪物語にする?」
「読めるの?」
「もうすぐ戦争が始まるんだぞ」

20人足らずの子供たちが、だらだらとしゃべっているところだ。
夏休みはまだなのだろうか?
先生はいないので、自習の時間、あるいは休み時間なのだろうか?

「先生、早く、早く!」
金網の教室の生徒たちが一斉にこちらを向いた。

「早く、宿題出してよ!」
一人の少女の手が金網の向こうから伸びて来て、あり得ない力で引っ張った。
気がつくと、教壇の上に立たされているのだった。
子供たちは、全員銃口を教壇に向け構えていた。 

「撃てー!」
学級委員の声が、響く。
その時、目の前がはっきりと暗くなった。






テーマ : ホラー・怪談
ジャンル : 小説・文学

カレンダー
09 | 2008/10 | 11
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
リンク(相互、片道、色々…)
最近の作品
最近のコメント
プロフィール

junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

最近のTB / 返詩
そんなカテゴリー
折り返し地点

『折句ストレート』

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

フリー素材のある場所

・天の欠片
・e-素材web
・素材屋さんromance.com
・アイコンワールド




RSSフィード
月別アーカイブ
フリースペース

フリー百科事典
『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。