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愛ある木

チーターとして歩くのに疲れた。
僕は亀になった。
その瞬間から、僕の横をピョンピョンとたくさんのうさぎたちが追い越していく。
うさぎって、こんなに速かったんだ。
うさぎだけじゃない、チワワ、マルチーズ、ダックスフントに上から見下ろされながら置いていかれるなんて、驚くべき経験だ。
ついには、カブトムシにまで抜かれたぞ。

長いゴボウを持った子供たちが、集まってきて僕の背中を突っついてきたけれど、首をすぼめて完全ガードすればゴボウなんかはちっとも怖くなんかないのだし、それはまるで遥か何万光年彼方からやってきたピカピカの宇宙船に、尖った石ころを投げつけているようなものだったのだから、僕はほとんどうとうとし始めたくらいなのだった。大船に乗った気で歩いていると、悪い子供たちは、もっと悪いことを探しに散っていった。
そうして歩いていると、コガネムシに抜かれたぞ。

どんどんと置いていかれた後の風景は、とても静かだ。
もうレースのことを忘れられる。
そうだ、
僕は遠い宇宙のことを考える。
遥か過去のこと、未知の未来のことを想像する。
僕が歩いているのは、この場所じゃない、
どこかだ。

みんな、
いなくなれ。
亀は、つぶやいた。



チーターの頬のように
選ぶ余地のない道は
とても狭い

岩やチワワに
ぶつかりながら
歩いて行こう

坂が見えたら
上がっていこう

夕焼けまでも

亀の甲羅のように
用意された道は
とてもかたい

人差し指に
さされながら
歩いて行こう

角が見えたら
曲がっていこう

優しさまでも

続いていくなら
歩いて行こう

どこかにあるさ

自分の道が




長い長い眠りから覚めたマンモスが、背後から迫った時、亀は本来の自分を取り戻した。
それは、やっぱり猫だ。
早速、猫は本来の猫のようなスピードで駆け出した。
すると、今まで亀であったことがうそのように、あるいは亀であった時間が猫の脚力を十分に温めていたというように、それはすごいすごいスピードで走ることができたのだった。まるでアンパンマンの友達のように猫は、微笑んでさえいた。
けれども、マンモスも長く休んでいたことについては、猫以上だったし、その大きさといったら正にマンモス級だったのだから、追跡の足はまるで緩まるということはないのだった。

猫は、猫らしい逃げ足と優雅さで木に跳び乗った。
なぜなら、そこに木があったからだ。
自分の道を探し当てた旅人の確信に満ちた歩みのように、猫は振り返ることなく木を歩き、自らをマンモスの牙の届かない安全な場所に運ぼうとした。
けれども、何かが猫の単純な計算を狂わせてしまった。木はマンモスの背よりも低かったのだ。あるいはマンモスが木よりも偉大だったのだ。
ズシリ、ズシリ、と近づいてくる灰色の脅威に、猫はついに追い詰められ、小さくなった。

その横顔は、今にも月から零れ落ちそうなうさぎのように真っ白だった。

その時、お婆さんの声がした。
気のせいでなく、木の下にはお婆さんの姿があった。
次の瞬間、お婆さんはヒョウになった。
なぜなら、愛があったからだ。

ヒョウは、ヒョウらしい勇敢さと優雅さで木に跳び移った。
あっという間に猫のところまで到達すると、その優しさでもって猫を抱きくわえた。
それから、ヒューッという音とともに飛び乗ったのはマンモスの大きな背中だった。
これには、流石のマンモスも手も足も出ない。
猫もようやく安心することが出来たのだった。

猫とヒョウは、あるいは、猫とお婆さんはマンモスの背中で昼寝をすることにした。
しばらくして、マンモスは、
猫のイビキを聞かされることになった。








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テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

サマーバーゲン

夏のバーゲンが、始まったのはいつ頃だったろうか。
おそらく、夏のはじまり頃だろう。
でも、それが思い出せない。
家具屋の窓には、10%オフの紙が貼ってある。
家具屋の前には、店のお婆さんが座っている。
お婆さんがいない日には、大きな犬が舌を出してハーハー言っていたり、水を飲んでいたり、寝そべっていたりする。
それは、曜日によって決まっているのか天気によって決まっているのか、適当に決まっているのか決まっていないのかわからなかったが、必ず犬かお婆さんかどちかだけであり、犬とお婆さんが同時にいるということは一度もないのだった。


*
夏の日に
束の間落ちた
優しさは
スーツケースの
三日月だった
*


夏の間は、夏の歌を歌うことにしている。
それは夏休みの宿題だった。

家具屋の前を通ると、今日は、家具屋の前にはお婆さんが座っている。
特に何をするというわけでもなく、ただ座っている。
静かに前を見つめ、背筋を伸ばして、座っている。


*
夏のかぜ
束の間落ちた
闇の中
隙間に遠い
みどりの記憶
*


夏の間中、歩いていた。
歩いていると、色んなものとすれ違う。すれ違い、色んなものは過ぎて行く。
歩いているだけで、どんどんどんどん過ぎて行く。
歩けば歩くほど、どんどんどんどん過ぎていって、どんどんどんどん失っていく。
けれども、立ち止まっていても、やはり同じように失っていくのだから、どうせ同じなら歩かなければならない。
歩いていると、決まって家具屋の前を通る。何回でも通る。

「夏のバーゲンは、いつまでですか?」
座っているお婆さんに、訊いてみた。

「夏の間」
やっぱり、そうか。
やっぱり、そうだった。
夏の歌と同じ。


*
夏休み
束の間落ちた
宿無しに
澄めば親子の
みたらし団子
*


夏のバーゲンが、始まったのはいつ頃だったろうか。
おそらく、夏がかけ始めた頃だろう。
でも、それが思い出せない。
あと、どれくらい残っているのだろうか……。

歩いていると、いつの間にか朝が夜になり、日曜日が水曜日になる。
月夜は真昼になり、水曜日は月曜日になる。
家具屋の前のお婆さんが、犬になっている。
家具屋の窓の貼り紙には、10%~30%オフと書いてあった。

「夏のバーゲンは、もうすぐ終わりですか?」
寝そべっている犬に、訊いてみた。

けれども、犬は、眠っていて答えられなかった。
あるいは、眠ったふりをして答えなかった。


*
夏はもう
束の間落ちた
約束だ
水性ペンで
短く書いた
*


朝の商店街を歩く。
準備中となっている店を覗くと、店の中で従業員がせっせと準備をしている。
せっせせっせと言う賑やかな声が、漏れてくる。
閉店、本日終了、今日はもう終わりましたとうたっている店は、静かなままだ。
たくさんの静かさに打たれながら、歩いた。
商店街を端から端まで歩いて、商店街を突き抜けた。太陽が高い。

家具屋の前を歩くと、昼だった。
貼り紙は、とうとう半額になっていた。
夏のバーゲンも、間もなく終わる。


*
夏の輪に
束の間落ちた
柔らかく
擦り切れたひと
みかんのままで
*


知らない街を歩いた。知らないものばかりが目に入る。
知らない街は、自分のことを知らない。
だから、知らない街には多くの逃亡者たちが身を潜めている。
知らない街をゆっくりと歩いた。知らない街を歩けるのは、一度きりだ。
このまま歩いていて、冬になったらどうしよう……。
逃げているわけでもないのに、時折どうしようもない不安が襲ってくる。
しばらく歩いていると、家具屋の前にいた。

70%~90%以上オフ

もう、捨てるような勢いだった。
もう、おしまいなのだろう。もうすぐ……。

「夏も、おしまいですね」
久しぶりに、お婆さんに話しかけた。

「あの夏は、終わったけどね……
 まだ残ってる夏もあるのよ」
お婆さんは、あの夏の方を見ながら答えてくれた。

「夏のバーゲンは、まだ続くのよ」
そう言って微笑んだ。

「そうですか。じゃあ……」

僕も、夏の歌を……。


*
夏はかれ
束の間落ちた
夜光虫
寿司屋のかどで
三毛猫に逢う
*


あの夏とは違う夏を歩いた。
もう少しだけ、歩いていたいのだった。
夕闇、鳴き始めた虫の音色は、落ち着いている。
前方から流されてきた落葉と、音もなくぶつかった。
風は、夏でないどこか遠いところから吹き始めていた。



* 何かしら伝えるまでは休めない 筋書き未だ見えないけれど *






テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

人の記録

朝、目覚めると人になっていた。
久しぶりのことだった。
昨日は確か、アホウドリだった。
その前は、ドブネズミ、その前は、赤とんぼ、その前は、シロイルカ。
その前は、テナガザル、その前は、ヌタウナギ、その前は、ハイイロオオカミ。
その前は、縄文式土器、その前は、飛行機雲、その前は、向かい風、その前は……
だんだんと、思い出すのが難しくなっていく。
確かなのは、今は人であるということ。


「今日は、何曜日ですか?」
会社の人に訊いてみる。月曜日ですか。そうですか。
「あなたは、誰ですか?」
逆に訊かれて、驚く。
僕は僕です、か、僕は人です、かを迷っていると向こうから、
「あなたは、陪審員ですよ」と言われる。
陪審員と決めつけられて、おたおたとする。


たった一日で白黒つけるのは、難儀だった。
青年は、如意棒を振りかざしながら、街中の自転車をなぎ倒したらしい。
自転車を放置している者にも問題あり。自動車でない分だけ、まだ救いあり。如意棒を持っているのが子供ならもっと個性を伸ばしてやるべきだが、そうでなければ自由の行き先を見誤ったということだ、などの意見もあったが、悪いものは悪いという単純な意見が多数を占めた。
石の上に30時間の罰で、なんとか意見はまとまった。


「何の調査ですか?」
寂しい夜道で、机を置いて従事している男に尋ねる。
アホを数えているんですか、なるほど、なるほど。
最近は、多いですね、アホ。
言った後で、少し不安になるが、自分のことは置いておかないと何も言えないので、まあいいかと思う。
朝までですか、大変ですね、まあ頑張って……。
眠らない街だな、ここは。でも、眠い。人間、疲れた。
明日は、何になっているだろうか。慣れっこの不安、不安、不安。
期待、少し。


朝は、必ず新しい何かをつれてやってくる。
昨日が蜥蜴であれ、ヤドカリであれ、全く新しい形を運んでくる。
今日が人なら、またいつか人である日も訪れるのだろう。
そして、人である時は、できるだけ人でなければできないことをしておく。
そう考えながら、日記なんかも書き残しておく。
人である誰かが、読むのだろうか。
おやすみ。




テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

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おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
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今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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