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2008-04-16 Wed 20:40
押入れの中は、未開の森のようだ。
底知れぬ闇が、その奥深くに広がっている。 かつては猫も、その中で眠っていたことがある。 けれども、その一番深い場所までは一度も行くことはなかった。 久しぶりに、本当に久しぶりにお婆さんは押入れを開けた。 バサバサと音を立ててコウモリが出てきた。 猫が超音波を出して威嚇している間に、お婆さんが窓を開ける。 コウモリは列を成して出て行ってしまった。 代わりに入り込んできたのは、白い風だった。 書かなかったのではない 書きかけて書きかけて 書けなかったのだ いくつもの迷いの中で 本当は…… 言わなかったのではない 言いかけて言いかけて 言えなかったのだ いくつものためらいの中で 本当は…… 何もしなかったのではない 何かを しようとして しようとして できなかったのだ 何度も何度も 迷いためらい 打ち消された物語を 僕らは 読まなければならない 張り裂けそうな 苦しみと闘いの果てに 傷ついた静寂を 僕らは わからなければならない 少しだけ 心を広げて お婆さんは、押入れの中から取り出した風呂敷を広げた。 中から出てきた箱は、お婆さんの歯の色に似ていた。 しわしわの手を広げて、箱の端を持ち上げようとするが開かない。 どうやら、開き難い箱のようだ。 猫も近づいてカリカリと爪を立てたり、ウーウーと唸ったりした。 そして、お婆さんは部屋が寒いことに気がついて、さっき開けた窓を閉めに行った。 それからトンカチを持って戻ってくると、トントンと箱の端を叩き始めた。 トントントン トントントン …… トントントン トントントン …… トントントン トントントン …… そうだ、これは箱ではなく、太鼓だ! 猫は、トントン拍子に合わせて踊り始めた。 その横顔は、酔っ払ったドラキュラのようだった。 猫のお腹がグーグーと鳴り始めた頃、太鼓の演奏が終わった。 太鼓の中から、一通の手紙が出てきた。 それはきっとラブレターだ。 猫は、ピンと来た。 お婆さんは、猫に聞こえないように手紙を読み始めた。 けれども、こっそり覗いてみる。 見覚えのある字だ。 猫は、更に首を傾けた。 |
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| 猫と婆とそんな横顔 |
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