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飛び廻りの神様

願い事を考えているうちに、時間ばかりが過ぎてしまう。
だから、今年お婆さんはまだ神様に会っていない。
それでも本を開けば、所々で神様が出てくるような気がした。
それは人の作り出した神様かもしれないけれど、時にそれは信じてもみたいような神様だった。
この寒い季節には……。
ベンチの上で、お婆さんは本を読んでいる。
『さかあがりの神様』……
そんな神様も、いるのかもしれない。



たった一本のマッチが
一夜の闇を灯す時に
たった一行の比喩が
ひとつの傷を癒す

温かく灯された時間
久しぶりに
生命は沸き立っている

されど
一本のマッチは
短く
儚く
脆い

たった一本のマッチが
ひとりのキミを照らす時に
たった一行の比喩が
ひとつの影をつくる

行き先を決めかねた夜
不思議と
生命は踊りだしている

されど
一本のマッチは
脆く
儚く
折れやすい

頼りにするには
あまりにも




味方からパスを受けた猫は、芝居がかったフェイントでDFをかわした。
勝負の世界の中では、正直者は損をする。
キャットサルでも、それは同じだった。
そして味方からの信頼を得るためには、ゴールを決め続けるしかない。
飛び出してきたキーパーを確認すると、左足でちょこんと浮かした。
無猫のゴールにボールは吸い込まれていった。
ゴール!
猫はクルクルと廻って喜びを表現した。

その横顔は、永遠のガラガラ抽選会のように感動に満ちていた。

回転の中で、猫はベンチの方を見た。
けれども、お婆さんは本の中にいた。(何回転目かのさかあがりの途中に)

猫は廻る。
廻り続ける。
感動のプロペラは、廻ることをやめてしまった時、
前には進めなくなってしまうから……。
やがて飛ぶまで、
猫は廻っていた。








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テーマ : 和風ファンタジー
ジャンル : 小説・文学

消える消えない

「残しておいてくれないか。
 全部消してしまわないでもいいじゃないか。
 毎日のようにじゃなくても、たまに連絡したり、
 また会える…」

「ましだから。完全に、
 消えた方が、ましだから。
 消せなければ、進めないから」

そこで、お婆さんはテレビを消した。
すると猫が文句を言いそうなものだったが、それは猫の好みの番組ではなかったし既に眠っていたこともあって、猫はやはりそのまま静かに眠り続けていた。
お婆さんは、ほっと胸を撫で下ろしてテーブルの上を片付けた。
といっても、お婆さん一人分の食事を片付けるくらい猫の手を借りるまでもない。
大抵いつも少し残ってしまうのは、お婆さんが小食というわけではなく少し多く作ってしまうためだった。
デンターライオンで歯を磨き終えると、部屋の明かりを消した。
今日が無事に終わった。



足跡一つ残さずに
夜を一つお祭りにして
空飛ぶ円盤みたいに
消えていく

二人だけの秘密を残し
一足先に東の空へ
いつかの朝のように
キミが

そうだ
誰もがいつも
消えていくのだ

消えない何かを残すために
やってきては繰り返し

消えない何かを残すために
やってきては繰り返し

手掛りひとつ残さずに
世界をひと時ミステリーにして
遥かなる星座のように
消えていく

自分だけの美学を残し
伝わることのない
メッセージのように
キミは

そうだ
僕らはいつも
消えていくのだ

消えない何かを残そうと
躍起になってはまた

消えない何かを残そうと
躍起になってはまた

繰り返し 繰り返す

消えた昨日が今日となり
消え行く今日が明日へと
そうして新しく
生まれ変わっていけるように

繰り返せる
限り
繰り返す

消えない想いを
消えない何かに
託すように




次の日がやってきた。
朝は昨日の残りから始まる。
残っているということは、何と素晴らしいことだろう!
グツグツと鍋の中で、うどんを煮込む。
するとできあがったのは、カレーうどんだ。
早速いただきます。
お婆さんはすっかり温まった。
食べ終えた後も、カレーの匂いはしばらくの間残っていた。
その頃猫は、お婆さんが一晩温めていた場所で朝を温めていた。

その横顔は、昨日と変わらずお婆さんを安心させる。

お婆さんは、コーヒーを入れテレビをつけた。


「…消せなければ進めないから。
 新しい場所に進めないから」

昨日、消した場所からドラマの続きが始まった。






テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

卒業泥棒

まだまだ増やせそうだった。
決して広くはない部屋の中は、お気に入りのコレクションで満ち溢れていた。
ミチルは今日も、磨きのかかった技術で一体一体獲物たちを吊り上げていく。
極め続けたクレーンゲーム、狙ったものは、逃がさない。
けれども本当は、救ってあげているのだ、
捕らわれの小人、怪獣、宇宙人たちを……。
一枚一枚なけなしのコインでもって。

透明な箱の向こうで、猫と目が合った。
確かに中に入っている。
生きた、猫が。



もうそろそろ
卒業だよといって

春を
ボールを
アイテムを

キミは
好きなものを取り上げる

もうそろそろ
卒業だよといって

ミロを
ドールを
アイデアを

キミは
宝物を取り上げる

もうそろそろ
卒業だよといって

ネロを
ノートを
愛するものたち

キミは
何もかもを取り上げる

卒業泥棒

闇を
時間を
魔法を
笑みを
友達を
愛を

空っぽが僕に満ちるまで

さらっていく




スタッフのお婆さんが来ると、猫はすっかり生命の気配を消していた。
その他大勢の中に同化して、瞬き一つ見せなかった。

「よくできた縫いぐるみでしょう」

ミチルも、思い違いを笑いながら詫びるしかなかった。
気を取り直してコインを投入する。
慎重に→ボタンを操作すると、いい感じで一体の縫いぐるみを持ち上げた。
はずだった。
なぜか、失敗に終わった。
隣にいた猫が、ちょっとだけ動いて邪魔をしたように見えた。
今度は狙いを変えて、遠いところにクレーンを走らせると巧く一体の縫いぐるみが持ち上がった。
順調に救出口まで、運ばれていく……。
けれども、跳び上がった猫が払い落としてしまった。

その横顔は、童心に住み着いたネッシーのように何かを守っているように見えた。

一つも、取らせないつもりなのだ。
ミチルは、燃えた。
プライドにかけて繰り返し繰り返し、挑戦した。
結局のところ、猫が勝った。
敗者として、すっかり日の暮れた帰り道を歩いた。
時間を、盗まれたような気がした。





テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

冬のあなたに

猫を膝に抱いて、お婆さんは闘っていた。
出る釘は打たれるものだが、腕のいい釘師ならば出すぎた釘までその鍛えの入った腕で打ち付けて、いかなる方向にも曲げることができるのだ。
だから、今日の「冬のあなた」はとても手強い。
今日はもう、出そうもないね……。
そう言うと、猫も頷いた。

パチンコ玉出を早々に脱出した。
まだ、空に少し青さが残っていた。

   出します! 出します! どこまでも。

旗は、嘘だけを載せてどこまでもなびいていた。
少しだけ、春の風だ。
冬のあなたよ、さようなら……。



元気だった頃
一度押せば
顔をみせた

もう何度
押してみても
あなたは出ない

枯れているのか
萎れているのか

カチカチと
ノックする音だけ
虚しく響いてる

元気だった頃
ひと時休めば
元に戻った

もう何を
試してみても
あなたは戻らない

隠れているのか
渇いているのか

もしもしと
呼びかける声だけ
虚しく響いてる

もう出ないのか

あんなにも
元気だったのに

空っぽになった
冬のあなたに
さよなら言おうか




デンターライオンは、もう出てこなかった。
それでもあきらめるのは早すぎる。
ない知恵を搾り出すように、お婆さんは必死でチューブの端っこをつまんで同時に喉の奥からまじないのような声を出していた。
本当はまだ少し残っているデンターライオンは、人の心を知ってか知らずか、まるで外の世界に出て行くことを頑なに拒む子供のように頑張っていた。
残りが少なければ少ないほど、その最後を惜しむようにデンターライオンは頑張る。

「出ておいで、出ておいでよ……」

お婆さんは、懇願するように語りかける。
すると、部屋の片隅から猫が出てきた。

その横顔は、冬の終わりのデンターライオンのように白かった。

けれども猫には少しもかまわずに、お婆さんはデンターライオンを今度は両手で握り締めて、まるでお侍が切腹する時のように腹に力を入れて頑張っていた。
その頑張りに、デンターライオンもとうとう少し折れて、ほんの少しだけ出てきた。
お婆さんは急いで歯ブラシを手にすると、あたかも小さな金魚をすくう時のようにデンターライオンに近づけた。
デンターライオンは、素早く身を縮めた。
歯ブラシは、まだ猫のように白かった。






テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

マネキン14号

午前3時の球技。
昼間動くことを禁じられていた、その鬱憤を晴らすかのようにマネキンたちは暴れまわった。
試着ルームをゴールに見立て、激しくゴールを狙う。
マネキン14号が高くジャンプしながらシュート態勢に入ったところに、長身のマネキンが体をぶつけた。
勿論それは、ルールブックによると禁止になっている。
暗がりの中で、中途の笛が鳴り響いた。

まるで警報のベルが作動したかのようだった。
猫とお婆さんは、身を寄せ合って身を伏せていた。
猫の光る目が、いつ彼らに生命の存在を知らせてしまうことになるかハラハラしながら……。
閉店に出遅れてしまったデパートの7階で、二人が目にしているものは決して見てはならないもの。
あるいは、目覚めぬ夢だった。



猫のトランポリンが
優しさではじける時
あっちこっちで
笑いの空が舞う

イルカの枕が
空しさで乾いた時
あっちこっちで
笑いの海が咲く

それから羊が
子守唄を歌い終えたように
静寂が押し寄せて

リターンのないサーブを
僕はうつ
うつ
うつ


ウ冠を被った幽霊が
孤独の靴を落とした時
あっちこっちで
笑いの風が立つ

トンネルを抜けた渡り鳥が
奇跡のくじを引いた時
あっちこっちで
笑いの春が弾む

それから亀が
上り坂を駆け上がるように
静寂が押し寄せて

突っ込みのない相槌を
キミはうつ
うつ
うつ


箸が転げても笑えるならば
夜が明けても笑えるならば
本当は僕らは必要なくて

本当に必要なのは
失った人

本当に
必要なのはもう
笑えなくなった人

マネキン14号に

僕は
うつ




バランスを崩しながら投じたマネキン14号のシュートは、転々とコロげて猫の手元にやってきた。
お婆さんが制止するよりも早く、猫はボールを投げ返した。(あるいは、蹴り返した)
もう、猫は十分に熱狂していたのである。

「誰だ!」
声を上げたのは、人間だった。
やはり警報ベルは作動していたのかもしれない。
昼色の懐中電灯がマネキン達のお祭りを、全裸にしてしまうかもしれない。
その時、猫はなぜか自分から声を上げて大げさに動き始めた。
(警備員さん、こっちだよ……)
そしてお婆さんは、お婆さんで、ゆっくりと制服の背後に近づいていった。
トントンと肩を叩く。
恐る恐る振り返った男に、

「うらめしや~」
両手を上げて、キツネのお化けの真似をしてみせた。

その横顔は、三つ目のキツネがおねだりをしているようだった。

警備員は、あまりの恐ろしさに、出た~と叫びながら逃げ出していった。
猫は、キツネの足下でピョンピョン跳ねて喜んだ。
人間的な笑い声がフロア中に広がっていたけれど、お婆さんにも聴こえないのかもしれない……。
マネキン14号の手の中で、猫の返した球体が、
微笑みを取り戻すのが見えた。




テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『折句ストレート』

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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