|
2008-02-21 Thu 08:48
反応は遅かった。
お婆さんの月の大地での最初の一歩のように、とてもゆっくりゆっくりな郵便屋さんのように。 届くのには時間がかかる。 そしてようやくにして光を灯す。 けれどもそれはすぐにちかちかと明滅を繰り返し落ち着くことがなかった。 いつ頃からか、お婆さんの家の明かりは頼りなく不安定で元気だったり不機嫌だったり、はしゃいでみたりしょんぼりしていたり、突然正気を取り戻したかと思えばずっと長い間落ち込んでいたりする。 今日は、激しく不安定な調子だ。 もうそろそろ、新しいものに取り替えた方がいいのかもしれない。 そう思いながら、もうすぐ春は来るのだろうか来ないだろうか、とお婆さんは思う。 気まぐれな光は、まるで猫に似ていた。 もしもキミが ちかちかと囁いて 去っていったら 大きな冷蔵庫の中で 僕は冷たい 迷子になるだろう もしもキミが ちかちかと疲れて 眠ってしまったら 冷たいジオラマの中で 僕は大きな 子供になるだろう もしもキミが ちかちかと瞬いて 消えていったら 東も西も忘れて おかしくて ただ笑うだろう 誰もいなくなった 気楽な道を 歩いていくだろう だとしても だとしても 歩いていくだろう 猫は冬の散歩道をひとり歩いていた。 久しぶりに雪が積もった街の夜はとても静かで、鼠一匹いない。 みんなどこに行ってしまったのだろう……。 空に向かって謎を吹きかけた。 それから犬のようにスキップしながら猫は歩いてみた。 誰も見ていないと思うと、恥ずかしくもない。 その横顔は、打ちとけ始めた雪だるまのようだった。 煙草屋の角を曲がると、眩い明かりが猫の白い顔を照らした。 ひとに反応して点灯する照明だった。 瞬間、猫はピンと背筋を伸ばした。 |
|
| 猫と婆とそんな横顔 |
|
メールフォーム |
|
|
Powered By FC2 |
|
|
フリー素材のある場所 |
|
・天の欠片
|
RSSフィード |
|
|
フリースペース |
|
フリー百科事典
|
ブログ内検索 |
|
|




