冬の散歩道
2008-01-22 Tue 12:22
雪ダルマの口車に乗せられて、猫は滑った。
冬色に染まった道の上を、運命的に滑り落ちていった。

「お婆さん、助けて!」

けれども、お婆さんは雪ダルマの口車に乗せられている。
親切な看護士さんであるかのように雪ダルマを信用したお婆さんは、だから疑いを巡らせることもなく、暖かな家を目指して帰り道を急いでいた。
一度も振り返ることはない。
猫は落ちて冬色に染まり、落ちるところまで落ちた、と自分でも思った。
もはや、冬の運命共同体だ。
ただ不安だけが、雪ダルマのように膨らんでいった。



ぽっかりとあいた
キミが落としたのは
きらきら輝く
金の星

ふわりと浮いて
キミが拾ったのは
きらきら輝く
銀の星

きかせておくれ
キミが集めている
はやい話が
短いお話

たくさんたくさん
きかせておくれ
きらきら輝く
お話の星

狭く歪んだ
人の世の檻の中を
一夜中
照らしておくれ

ぽっかりあいた
ボクが求めたのは
小さな小さな
お話の星




気がつくと、知らない冬の中に取り残されていた。
舞い落ちる白さの中から、何者かがはしゃぎながら近づいてくる。
それは犬のおまわりさんだった。
一通り根掘り葉掘り嗅ぎ回った後で、言った。

「迷子の迷子の誰かさん、
 キミがいなくなって寂しいと思う人はいないのかい?」

もしもそうなら、それは少し寂しいことなのかもしれない。
けれども、猫は答えなかった。
代わりに、おまわりさんの方をじっと見据えた。
その後ろに、手錠を掛けられた雪ダルマが、顔を曇らせているのが見えた。
猫は、回れ右して歩き出した。
本当は、助けたかったんだ……。
もしもそれが誤解なら、世界中のありとあらゆる誤解が、
早くとけますように、
そして、早く春が訪れますように……
見えない星に向かって、
猫は祈った。







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