ヒツジとヤギ
2007-11-19 Mon 18:58
お婆さんは、毎日母になる。
ヒツジの旅から帰ってくる度に、
枕元には、お婆さんの子供たちが生み出される。
生み出される速さ故に、その一つ一つを、
お婆さんは憶えておくことが出来ないのだ。
だから、猫はヤギのように食べてあげる。
猫はお婆さんと違って、
とてもきれい好きなのだ。



なにかな これは
私の分身

枕元の紙切れは
いつもなぞなぞ

かなかな これは
誰か答えて

自分で生んだものなのに
なぜだか 輪郭もわからない

わからないから捨ててしまおう
ろくでもない一行よ

なぜかな キミは
急に転身

隣で夢見てたのは
いつのことか

なぜかな これは
誰か教えて

自分で生んだものなのに
なぜだか 心もわからない

わからないから捨てられようか
かけがえのない一時よ

他人の態度の寂しさを
遠くから眺めながら

呼びかける
呼びかける
呼びかける

そうしてもう一度 

生み出したあの日の

大切な あいを




あいうえおと書かれた、意味のなさそうな紙切れを口にして、
ヤギは無表情に顎を動かしている。
味気のない朝食を食べる子供のようだった。
本当はもっと中身のある紙を食べたい……。
ヤギの冷たい目が言っていた。
かさかさという音に気がついて、お婆さんが起き上がる。
部屋の奥からほうきを持ってくると、怒り狂ったように襲いかかった。

「この盗人め!!」

ヤギは驚いて、一歩後退した。


その横顔は、何かが生まれる前のメモ切れのように白かった。


ヤギは縮小しながら、ゆっくりと猫の姿に戻った。
ビューンと棚に跳び上がって、お婆さんの怒りから逃げた。
ほうきを武器にするとは汚い!
猫は冷やかな目で、見下ろしていた。






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