10円の夢
2007-11-13 Tue 19:39
夢の6億円は、確かに夢に終わって、
お婆さんの手には、たくさんの10円玉があった。

「夢ってのは、当てるもんじゃないだろ……」

年金も何もあったもんじゃない、お婆さんの暮らしは案外厳しかった。
うまい棒を3本カゴに入れる。
ムギチョコに、蒲焼さん太郎。
幾つになっても、お菓子はうまいとお婆さんは言う。
猫は、よっちゃんを掴んでカゴに放り込んだ。
ごっそりと、音がした。



10円の歌を歌うよ
続きはきみが
つないでね

10円で終わる歌
後はきみが
なんとかしてね

たった10円で
物足りない歌
入り口までしか
たどり着けない歌

始まるけれど
続きはない

ほんの一瞬
ぴゅーっと吹くだけの

誰に
届くこともない
頼りない歌

そこからきみが
広げていってね

10円だけ
ぼく 歌うから




鼻歌を歌いながら、お婆さんはお菓子を食べた。
お菓子のある生活は幸福の証しである。
それは、猫もよくわかっていた。
よっちゃんを食べながら、噛みしめていた。
お婆さんは隅っこに何かを見つけたようだ。

「当たり! 当たり! 大当たり!」

小さな袋を握り締めて、飛び上がった。

その横顔は、万馬券を手に飛び回る魔女のようだった。

これだけあれば、当たるよ……。
猫は、少し冷たい目でお婆さんを見上げた。





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