アサガオ
2007-10-05 Fri 08:28
朝早くに、お婆さんは水をまく。
目覚めたばかりの草花に、
昨日から熱を受け継いだアスファルトに、
憎たらしい人間に……。
今日も、お婆さんはバケツいっぱいの水を汲むと、
威勢良く、水をぶちまけている。
猫は、その被害に遭わないように身をかわす。
猫は、逃げるのがとても上手だった。



蒔いても蒔いても
実らない種を
僕は蒔く

待っても待っても
訪れない朝を
僕は待つ

昨日と同じに
今日が来て

実りの時は
まだまだ来ない

蒔いても蒔いても
実らない種を
僕は蒔く

待っても待っても
訪れないキミを
僕は待つ

昨日と同じに
僕はいて

実りの時は
まだまだ来ない

蒔いても蒔いても
蒔いても蒔いても

待っても待っても
待っても待っても

来ない来ない来ない
来ない来ない来ない

実りの時は
まだまだ来ない




憎たらしい人間が来たので、
お婆さんは、早速水をぶちまけた。
ばしゃーん、と水を被ったような音がした。
お婆さんが水をぶちまけたからだ。

猫は、次に起こることに備えて一歩後退した。
男が髪をかき上げると、ポトポトと水が滴り落ちた。
それもこれも、お婆さんが水をぶちまけたからだ。
お婆さんの仕業なのだ。

猫は、他人の表情で静観を決め込んでいた。
けれども、意外なことに男はこう言ったのだ。

「ありがとう! お婆さん、
 これで目が覚めました!」

その横顔は、読書に目覚めたアサガオのように前向きだった。

奇妙な生き物を見るような目で、
猫は、人間を見た。
朝の風が、心地良い。
あちらこちらで、秋が芽を出していた。





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