飛行
2007-09-10 Mon 01:43
「ここから飛び下りたらどうなるかな?」

ネコは笑いながら、こっちを見た。
4階の教室に残っているのは、二人だけだった。
校庭をゾロゾロと横切っていく、白い群れが見える。

「私が猫だったら、クルクルと廻って平気かな?」

憧れを込めて、ネコは言葉を続けた。
もしも何かだったら……
私たちは、そんな言葉あそびが好きだった。
そうして空想を泳いでいると、いつも時間は何気なく吸い取られていった。

「ジョン・マクレーンなら、3階の窓を破って助かるかも」

私も、主人公になりたかった。
物語は何でも良かった。

「ついでに学校全部を壊してくれたらいいのに!」

ネコは、半分本気だと思った。
死ぬほど嫌なことだってあるのだ。

「ねえ、鳥だったら……
 鳥は、怖くはないのかな?」

鳥が、遥か校庭の上空を優雅に舞っていた。
人でない姿を、ネコはまた憧れるように見つめながら大きく溜息をついた。
私はノートを一枚千切って紙飛行機を折ると、勢いよく窓から投げた。
夏の風に乗って少しの間上昇し、色のない空間を舞った。
真っ白い鳥のように……。

「なれるよね、
    ……   これから何にだって」

窓という窓を震わせるように、チャイムが鳴り響いた。
私たちは、もう行かなければならなかった。





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