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万能キャット

ひとつひとつ、女の説明は整っていた。
その完全な口調で物を売っているのだ。
今度のロボ・キャットは、家事もできるという。
洗濯から掃除から、お留守番までも……。
女は、その優秀さに対して熱弁を振るい、
お婆さんは少し疲れてきたけれど、
猫は相変わらず眠っていた。



生まれたての春のように
いつまでも瑞々しい
永遠を
あなたにひとつプレゼント

痛みは溶けて
傷は消えて
ひとつひとつ
根が生えて

あなたは
不満を遠ざけるでしょう

もぎ立ての果実のような
いまにも輝ける
美を
あなたにひとつプレゼント

見た目はすべて
思いの通り
ひとつひとつ
皺は消えて

あなたは
望みを手に入れるでしょう

毎日が
穏やかに晴れて

泣きたい時に 泣くでしょう

やがて
そんなきかいが 来るでしょう




「怠けることを知らない、パーフェクトぶり。
 あなたのパートナーに、ぜひお買い求めください!」

風の逃げ場もないほど完璧な説明を終えて、
女は言葉を締め括った。
その表情は、ロボットにも負けないほどクールに映る。

「そんなものの、どこが面白いのかね?」

キョトンとした顔で、お婆さんが聞いた。
あるいは、答えたのかもしれない。
ベッドの上で、猫の頬が少し反応したように見えた。

その横顔は、気まぐれに膨らんだ風船のようだった。

一定のようなリズムで寝息が聞こえてくるが、
それはやはり、ゆらいでいるのだ。
お婆さんは、わかっていた。




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テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

「起きろ」

「起きろ! 起きろ!」

目覚まし時計が連呼している。
まるで選挙演説のようだった。

 (言われなくてもわかってるよ

猫はわかっていた。
人から言われて何かをするのが、
何よりも嫌いだということを。

「起きろ! 起きろ!」

時計は猫の気持がわからなかった。
まるで選挙演説のように。

 (わかってるよ

猫は誰よりもわかっていた。
次に自分の取る行動を。

猫は、目覚まし時計を手に取って、
窓から外へ放り投げた。

 (誰にも、当たりませんように

猫は手を合わせて祈った。
何か悪いことが、起きる予感がして、
夏の朝に、少し震えた。



永遠

レコード針が星座の間を寄り道しているように、
ラジオからノイズが出入りしていた。
アンテナを折り曲げてしまったのは、猫だった。
それ以来、FMの受信がうまくいかず、
お婆さんはまた、ラジオに耳を近づけて、
クルクルとダイヤルに話しかけている。



素顔を見せない
きみの歌声が
僕を素直にさせる

きみの歌を追いかけて
僕はいつも
旅に出た

味方のいない時でさえ
きみの声は
背中を押してくれる

きみは僕の
星だった

素顔を見せない
きみの歌声が
僕を素顔に戻す

きみの歌と連れ添って
僕はいつも
街に出た

明日の見えない夜でさえ
きみの言葉は
明かりをくれる

きみは僕の
星だった

素顔を見せないきみは
いつも遠くから
いつも近くで
歌ってくれた

僕の世界を
ひとつの声で
変えてくれた

愛しいきみを

永遠に歌う




行ったりきたりしながら、自分の居場所を探すように。
けれども、それは簡単には見つからない。
忘れられない曲が流れてきているというのに……。
お婆さんは、雨音交じりのまま音量を上げると、
天界で眠っていた猫がびっくりして降ってきた。
勢い倒れたラジオを起こすと、不思議と音はクリアになった。
猫も、一緒に耳を傾ける。

その横顔は、遠い人に感謝を捧げる猫のように静かだった。

彼女の声に、お婆さんは目を閉じて聴き入っている。
夜深く、ラジオの向こうから、『永遠』が流れていた。




テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

ホームルーム

「今日の議題は何だ?」

先生が、
去年のことを思い出す鬼のような顔で問いかけた。

「まだ、決まっていません」

学級委員が、言い切った。
先生は、ポカンと口を開ける。
今だ、とばかりにみんなは一斉に消しゴムを投げつけた。
無数の消しゴムミサイルが飛び交って、まるで千秋楽で舞の海が優勝したように美しかった。

「決まってないとはどういうことだ!」

消しゴムをクジラのように吐き出しながら、先生は反論した。
決まっているのが当然だというような、ニュアンスが感じられる。

「今から考えるしかないと思います」
誰かが、言った。

西へ流れる雲のように、前向きな言葉だった。
僕らは、考えた。
今、話し合うべき議題を投げ合い、出し合い、潰し合った。
まるでK-1のリングのように、見守る女神はいなかったけれど僕らは決して手を抜かず足を止めて戦った。
時間が言葉の上を、ゆっくりと、あるいは猛スピードで過ぎていく。
空がもうすぐ、夏の雨をつれてくるだろう。
与えられた議題がないから、僕らは考え続けるしかなかった。

「何だっていいじゃないか!」

壊し屋ケンが吠えた。
みんなが瞬間言葉を失った。
先生さえも……。

世界一大きな議題の入ったオルゴールが鳴り始めたように、ゆっくりとチャイムの音が聴こえてきた。
今日の、ホームルームはここまで。

休日

「休日は休みにします」
「休むんですか? 休まないんですか?」

「休日は休みにします」
「休むんですか? 休まないんですか?」

「休日は休みにします」
「休むでいいんですよね?」

「休日は休みにします」
「つまり、休むんですか? 休まないんですか?」

会話は休むことなく続いた。


僕は思い切って、休日を休むことにした。

幸せのパズル

降りしきる星の中を、トボトボと、
猫はお婆さんの元へ帰って来た。
お婆さんの体は、すっかり星に埋まっていた。
つい数時間前、猫が砂に埋まっていたのと同じように……。

「星のお婆様!」

猫が叫んでも、お婆さんは動かない。
お姫様気分で夢を見ているのだ。



飴細工のパズル

数え切れないピース

積み上げられている

一つ一つが

小さな幸せのかけら

口に入れれば

優しく溶けて包む

食べたピースは

二度と戻らないけど


大きな幸せ

描きあげるか

小さな幸せ

味わっていくか


飴細工のパズル

数え切れないピース

並べて揃えていく

一つ一つが

ささやかな幸せのかたち

指に触れれば

優しく音が響く

食べてごらんと

軽やかに歌いながら


大きな幸せ

創りあげていくか

小さな幸せ

使っていくか




ちょうどお腹が空いてた。
猫は、星の尖った部分に手を掛けて、むしゃむしゃと食べ始めた。
食べるスピードなら、誰にも負けたことがない。
星が降り積もるよりも速く、口を動かした。
一つ一つ、数え切れない星のピース を食べて早くお婆さんを助け出そうと頑張った。

その横顔は、眠れる婆を救おうとする星の王子のようだった。

ようやく、飴細工のパズルが甘く溶けて、猫の指がお姫様の体に当たる。
お婆さんは、魔法が解けたようにお婆さんに返った。
私も一つ、と言って星を食べると、
幸せの香りが、夜風に流れた。





                文…junsora
                詩…あーるぐれい

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テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

星空のメリーゴーラウンド

世界が廻るように、猫はグルグルと廻っていた。
もう夜だというのに、猫とお婆さんは帰ろうとはしなかった。
梅雨だというのに、雨は落ちては来なかった。
そして夜は、何かを思い出すようにゆっくりと星を映し始めた。
お婆さんは首を傾けて、自分なりの星座を唱え始める。
深く座り直した椅子が、ギシギシと言った。

もう何周目だろうか?
猫は、夜の降りたグランドの上を廻っていた。
生まれたての地球のように、誰の声もしなかった。
  みんな、廻っているのだ……
  いつだって繰り返し……

猫は廻る星たちの運命について考えて、息を吐いた。
  今だって……
  きっと、誰もが迷いながら廻っている……

けれども、お婆さんは眠りの世界を彷徨っていた。



流星が降り注ぐ

銀河の中を

僕を乗せた船が

永遠に廻る

いつのまに

はぐれてしまった

きみはもう

地上に帰り着いただろうか


抗えぬ引力に

捕まった船が

蒼い星遠くに見て

いつまでも廻る

サイダァの

泡みたいに弾ける

星屑が

きみの目にも見えるだろうか


誰もいなくなった

孤独のメリーゴーラウンド

幾ら廻ってみても

きみを見つけられない


雨のよに降り注ぐ

流星の中を

僕を乗せた馬が

永遠に巡る

いつの日か

一緒に駆けてゆく

夢を見て

きみの星を見下ろした




見上げると、今にも星が落ちてきそうだった。
小さな猫にとっては、この場所は広すぎる。
たった一つの思い出の結晶を見つけ出すには、
とても、とても広すぎる。
お婆さんの手からはぐれた指輪を、
ついに猫は見つけ出すことができなかった。
そして、音もなく星は降り始めて、
猫は、そのキラキラとした匂いに少し寂しさを覚えた。

その横顔は、メリーゴーラウンドに残された一粒の雨のようだった。

横殴りの星が、ゆらゆらと激しさを増してきた。
猫は眩しそうに、目を伏せた。





                文…junsora
                詩…あーるぐれい


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テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

同じ歩幅で

誰も助けてはくれない。
長い長い道を、ひとり駆けて。
猫は、12月の呼び声のように疾走した。
踏み切りを越えて、猫は、
跳んだ。

高く、そして遠くへ……。

夏の空に停滞して、花火のように砂を舞わせながら。
やがて、猫はスローな曲線を描いて落ちて行く。
お婆さんは、じっと遠くから見守っていた。



行こうよと

君が声をかけてくれるのを

待ってる


一緒にさと

君が手を繋いでくれるのを

待ってる


どこまでもと

君が連れて行ってくれるのを

待ってる


いつまでもさと

君が夢を見せてくれるのを

待ってる


でも

やめた


一緒に行こうと

自分から

声をかけて

二人で目指そう


この道の先を




アスリートは、すっぽりと着地した。
風の審判員の計測によると、記録は5メートルくらいだった。
猫の跳躍は、今のところ世界基準には届かない。
この道は、そんなに浅くはないのだ……。
砂に深く埋もれながら、猫は思った。

その横顔は、桁違いの歩幅に届かない声のように小さくなっていた。

けれども、猫はゆっくりと起き上がると、コーチの元へ再び歩き始めた。
お婆さんと二人なら……、
この道の先に、
世界があるような気がしていた。





                文…junsora
                詩…あーるぐれい


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テーマ : 詩・唄・詞
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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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