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2007-06-05 Tue 17:01
季節は急速に夏に向かっていた。
けれども、お婆さんの短歌にはいかなる季語も入っていない。 お婆さんは食堂の最前列に陣取って、テレビにかじりついていた。 選者が新しく変わったらしいけれど、 お婆さんの作品は今日も取り上げられなかったらしい。 少し俯いて、席を立った。 猫は楽しそうにマグロを食べている。 変わらないで ずっと僕が 見ているから きみの作る物語 ずっと僕が 見ているから 時々僕はいなくなるけど またすぐ戻ってくるから 変わらないで ずっときみを 見ているから 僕の見たい物語 いつもきみが 持っているから 時々僕は消えているけど いつもきみを忘れないから 変わらないで きみのままで きみのままで 変わらないで お婆さんが帰って来ると、チャンネルが変えられている。 何者かによる陰謀に違いなかった。 イビチャ・オシムの顔がアップになると、猫は少し襟を正した。 「黄金布陣だって? 「10番をフォワード起用だって?」 お婆さんが、どうでもよさそうにつぶやいた。 けれども猫は、自分のことを呼ばれたように椅子から跳び下りた。 お婆さんのサンダルを奪うと、早速ドリブルを開始する。 その横顔は、夏に貼りついたオシム語録のように揺れていた。 「シュート!」 お婆さんの声で、猫が左足を振り抜くとサンダルは画面の中に吸い込まれていった。 俳句の番組が始まって、 お婆さんは、短く笑った。 |
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| 猫と婆とそんな横顔 |
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