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好きをいっぱい

閉じ込められた縫いぐるみたちの姿を見て、
お婆さんは、大切なことを思い出した。
どこに置いてきただろう?
どうして忘れてしまうだろう?
疑いが吹き荒れる中、アミューズメントを後にした。
夜のような昼の中を、お婆さんは歩き出す。
すっぽりと傘に包まれて、
空は見えなかった。



いろんな空が好き

白い雲が好き

眩しい太陽が好き

冷たい月が好き

優しい雨が好き

柔らかな新芽が好き

どんな花も好き

あふれる木漏れ日が好き

葉擦れの音が好き

甘い実が好き

小さな宝石が好き

可愛い洋服が好き

美味しいご飯が好き

暖かなお風呂が好き

面白い本が好き

今日が好き

昨日が好き

明日が好き

家族が好き

あなたが好き

友達が好き

あの子が好き

自分が好き

たくさんの好き

積み重なって

私を生かす

幸せになる




猫は街に架かった虹を、ゆっくりと渡っていた。
猫にとっても、恐ろしいほどに高い。
けれども、その向こうに幸せが待っているのだ。
そう言い聞かせて一歩踏み出した瞬間、足を滑らせた。
落下する途中、猫は半生を振り返ってみたが、特にどうということはなかった。
それからクルクルと回転して、お婆さんの頭上にピタリと着地した。

その横顔は、幸せを運ぶ曲芸師のようだった。

お婆さんの傘の上を、子馬のように駆け回った。
物凄い雨が降ってきたと思い、お婆さんは傘をきつく握り締めている。
雨は、とっくに上がっていたのだがお婆さんは、ずっと下を向いていたのだ。
虹に触れることもなく……。
互いに顔を合わすことなく、二人は重なるように再会した。
好きな時に、猫は下りてくるだろう。
あるいは、疲れた頃に。





                文…junsora
                詩…あーるぐれい

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テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

廻る廻るオルゴール

息一つ切らさず、馬はゴールに流れ込んだ。
お婆さんの見込んだ馬だけはある。
雨のバレリーナのように、お婆さんはくるくると廻る。
夜のような店の中で、お婆さんは両手いっぱいのメダルを掴んだ。
きらきらとして、まるで若さのようだった。
忘れてしまった猫のことなど、
もう、すっかり忘れてしまっていた。



廻れ

廻れ

くるくると


舞われ

舞われ

するすると


硝子のオルゴール

鳴らす舞曲

水晶の馬車が

翡翠の馬が


廻る

廻る

くるくると


涙の雨粒に

濡れる舞曲

薔薇石の花散らし

雲母の窓伝う


舞って

舞って

するすると




するすると音を立てて、猫は改札を通り抜けた。
雨音が牛耳る見慣れぬ街の中を、彷徨い始める。
水溜りを覗き込むと、人の手が浮いている。
けれども、よく見るとそれは小さな馬だった。
くるくると輪になって、十頭ばかりの馬たちが廻っている。
雨の中で微かにいななく声、あるいは唄を、猫の耳は聴いた。
そして、輪の中に加わろうと身を低くした。

その横顔は、水のルーレットに魅入られた人魚のようだった。

けれども、猫は大きすぎる。
馬たちと比べて、どうしようもなく巨大だったのだ。
猫は輪に入れない代わりに、せめていななこうとしたけれど、
猫はただ鳴くことしかできなかった。
お婆さんは、どこに行ったのだろう……。
仕方なく、猫は廻る馬の上を跳び越えた。





                文…junsora
                詩…あーるぐれい


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テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

声をかける

水溜りが道々に点在していた。
長い梅雨の入り口のようだった。
「我輩は猫ではない」と言って、猫は改札を通り抜ける。
不安な様子でお婆さんと猫は電車に乗り込んだ。
空席はない。
シルバーシートにもアニマルシートにも……。
けれども、どこにもかえれない。
今にも踏み潰されそうだった。

「掛けてください」

突然、少年が立ち上がった。



あなたの

何気ない一言が

私を

強くする

優しくする

嬉しくする

楽しくする


あなたの

さりげない一言が

私を

華やがせる

微笑ませる

弾ませる

救ってくれる


あなたの

たった一言が




お婆さんは、優しさの中に腰を下ろした。
続いて猫が、猫らしく体を折り畳むようにしてお婆さんの横に座る。
お婆さんは巾着袋を開けて、飴玉を取り出した。
ささやかな感謝のしるしだった。
けれども、少年はもう歩き始めている。

その横顔は、背中を向けているためお婆さんからは見えなかった。

猫は、心地良く揺られながら眠りについた。
着いたら、起こしてくれるだろう……。
甘い夢だった。
目覚めた時、猫はひとりだった。





                文…junsora
                詩…あーるぐれい



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テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

幸せのかけら

雨はいつの間にか上がっていた。
そればかりか遊園地は光を取り戻し、今はまた多くの人々で溢れていた。
おいしそうな匂いに、猫もお婆さんも吸い寄せられて。
タコ焼き屋の前を通ると、売れ残ったタコ焼きがタコ焼きの上に乗り、
そのまた上にタコ焼きが乗り……。
そうして、それはピラミッドのように高く夜にそびえ立っていた。
何だかもう、お腹がいっぱいになったような気がする。
そして、二人はコーヒーカップの中にいた。



色とりどりの金平糖の花束

チョコレートボンボンの宝箱

艶めくドロップスの小壜


焼きたてのクッキーの香り

ことこと煮込んだジャムの輝き

茶葉が楽しげに踊る紅茶


小さな幸せは

そんな

優しげなティータイムに似ている


ふとしたときに思い出す記憶

ささやかなことで微笑む顔

積み重なっていく幸せのかけら


小さな幸せは

そして

優しげな想いの中に広がっていく




今度は、猫も一緒に廻った。
ミルク色のカップの中で、お婆さんはモグモグと口を動かしていた。
甘い香りが、カップの中に溶け始める。
猫はクルクルと廻るカップに興奮しながら、同時に少し不安な気持で辺りを見渡した。

その横顔は、ティータイムから零れ落ちる砂のようだった。

今度は飛んで行かないだろうか?
ピエロは、馬たちは元気で生きているだろうか……。
猫は、遠く夜を見上げた。
幸せのかけらのように、星が散らばっていた。
お婆さんの手の上にある、ドロップと同じ色だった。
また一つ、お婆さんはそれを口にする。





                文…junsora
                詩…あーるぐれい



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テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

いっしょに

木馬は猫の言葉に耳を貸さなかった。
このままでは永遠の回転の中に、閉じ込められてしまうだろう。

「ああ、お婆さん!」

猫は、もはや追いかける力も失っていた。
こうしている間にも、木馬はゴーゴーと音を立てて、
夜の雨の中で速度を上げていく。

「一緒に飛ぶんだ!」

少年は叫んだ。
少女は少し怯えながらも、頷いた。
次の瞬間、小さな体が宙を舞った。



いちにのさん

そう言って

一緒に飛んだ

空に届くほど

高く漕いだ

ブランコから


いっせのせ

そう言って

一緒に越えた

目も眩むほど

深い谷間

手を繋いで


ひのふのみ

そう言って

一緒に行こう

星よりもまだ

遠くに続く

未知の道を




猫のように身軽な動きで着地した。
起き上がると、少女は元のお婆さんの姿に戻っていた。
隣にいるのは少年ではなく猫だ。
猫は、少し頭を抱え込んでいる。
お婆さんが振り返ると、彼はまだ木馬の上にいた。
けれども、その姿はもはや少年ではなくピエロだった。
そして木馬は、木以上の何かに変化し始めていた。

「ハイヨー!」

声を上げると、馬は勢いよく飛び上がった。
ピエロの乗る馬を先頭に、馬たちは星のように列を成して空の方向へ進み始めた。
どの馬も皆、水の中で生き生きとしている。

その横顔は、永遠の回転から解き放たれた命のように輝いて見えた。

彼らは進むことを選んだのだ……。
猫は、猫なりの結論を出そうとした。
年老いた少女と並んで、ずっと空を見上げながら、
二人とも、しばらく黙っていた。





                文…junsora
                詩…あーるぐれい




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テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

幻の遊園地

怪しさが、6月の空に下り始めていた。
人々の笑顔や笑い声の中にも少しだけ、雲が掛かり始めている。
猫とお婆さんは、少し寂びれかけた遊園地の中を二人して歩いていた。
次は、どこで遊ぼうかな……。
突然、ポロポロ涙を零しながらピエロがやって来ると、
お婆さんに赤い風船を手渡し通り過ぎた。

「もう、終わっているんです」

何のことだろうと思って振り返ると、もうピエロはいなかった。
その代わりに、ついに雨が降り出した。
周りを見渡すと、もう誰もいなかった。
けれども、何かが聴こえてくる……。



誰もいない広場に

哀しげなジンタが響く

濡れた観覧車に

遠い街が映る

カルーセルは廻る

幻の少女を乗せて

セピアの写真を抜け出

雨粒をすりぬける

ペンキの剥げた木馬

魔法の解けた馬車

くるりくるりと廻る

時を超えて廻る

笑顔の少年が駆ける

涙目のピエロが踊る

雨煙の中の

誰も知らぬ広場




とっくの昔に引退した木馬の前に、お婆さんは立った。
よっこらしょっ、と言ってまたがる。
まるでそれが魔女のかけた号令であるかのように、馬たちは動き始めた。

「ずるいぞ! お婆さん!」

猫は後を追いかけて、一緒に廻り始めた。
くるりくるりと……。
猫とお婆さんは、雨を避けるようにして回転を続けた。
けれども、猫は少しずつ遅れをとっている。
馬って速いな……。
猫は、お婆さんの方を羨ましげに見上げた。
けれども、振り返ったのは少女だった。
猫に向かって、楽しげに手を振っている。

その横顔は、雨に浮かんだ幻のように笑っていた。

そしていつの間にか、少女の前には少年の姿があった。
やはり、笑っている。
猫は、もう目が廻ってきた。





                文…junsora
                詩…あーるぐれい

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テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

六月の風船

病院で悟空は空を飛んでいた。

「いつからあんなに飛べるようになったの?」

「成長したんさ」


「人間ってそんなに変わるもの?
 私たちは日々悪くなっていく気がする」

「宇宙人なんだよ」


「宇宙人っていいな~
 あんなに人間に似てるのに…」

   *    *    *

赤信号が夜の歩行を停止させている。

「高い、たかーい!」

父親が嬉しそうに、赤ん坊を抱きながら星を見せている。
赤ん坊は、母親の手先から伸びている風船に惹かれているようで、届かない手を必死で振る様はまるでバイバイしているように見えた。

「そんなに高くもないのにな。 本当は」

青信号が夜に許しを与えて、私たちは歩き始めた。

「私もあんなだったのかな?」

「誰もがそうよ」

   *    *    *

ようやく、お好み焼きはできあがりつつあった。

「あんた、何が欲しい?」

「何もなくなっちゃった……
 何もいらないよ」

降水確率は80パーセント。
明日は、一日中雨らしかった。
それでも私は、残さずに食べた。
店を出ると、降り始めの雨の匂いが立ち込めていた。

   *    *    *

大事な話の続きが夢の中にあったけれど、朝は冷酷な試験官のように慈悲の欠片も見せなかった。
それでも私は、懇願するように大事な一日の栄養素と引き換えに朝を待たせた。
そうして朝がぎりぎり枯れてしまうほどになった頃に、口数も少なく玄関へ自分らしき形のようなものを運んだ。
靴にはなぜか風船が括り付けてあって、私はそれを手に取ったまま駆け出した。
天気予報は見事にはずれ、朝からあり得ないような天気だ。
大きく膨らんだ風船に「元気玉」と書いてあるのを見つけて、私はおかしくなった。
空に見せびらかすように、持ち上げると風がそれを欲しがった。
交差点の真中に差し掛かったところで、私は風のリクエストに応えて風船を手放した。
六月の風が楽しげに手招きすると、風船は私を離れて空高く舞った。
高く高く舞って、遠く遠く、どこまでも遠くへと飛んで行った。
本当に、どこまで行くのだろう?
どこか見知らぬ街で、あるいは異国の土地で、誰かがまるでドラマのように偶然見つけたりするのだろうか……。

「ありがとう……」

誰にも聞こえない声で、さよならを言った。


テーマ : 自作詩
ジャンル : 小説・文学

春眠

時々今が、いつかわからなくなる。
秋か春かどちらかと考えて、やはり今は春だと思う。
どちらかと言えば始まるのだ。
今から、迎えるのだ。
何を?



迷いに迷って疲れたら
ゆっくりゆっくり
眠りましょう

夢見た数だけ
猫にも
なれるのだから

恋に飲まれて
食べに食べたら
ゆっくりゆっくり
眠りましょう

夢見た時だけ
猫にも
なれるのだから

競って背負って
酔って人って
あんまりだから

今は もう少し
眠りましょう

巡り巡って
いつか本当に
眠りに就きましょう

だからそれまで
いきにいきましょう

迷いに迷って疲れたら
ゆっくりゆっくり
眠りましょう

いつかの朝が
柔らかな光で
目を開かせてくれるまで




お婆さんを迎えるのは、ふわふわした布団だ。
気だるい午後の隙間に入り込むように。
お婆さんはベッドに潜り込んだ。
遥か先に夢を見始めた猫が、寝返りを打つ。
夢の断片を投げ飛ばすように手を振ったりして……。

その横顔は、春の招き入れた夢の旅人のようだった。

やがて、お婆さんも春の住人となる。
静かな息だけが聞こえる。



テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

オシム食堂

季節は急速に夏に向かっていた。
けれども、お婆さんの短歌にはいかなる季語も入っていない。
お婆さんは食堂の最前列に陣取って、テレビにかじりついていた。
選者が新しく変わったらしいけれど、
お婆さんの作品は今日も取り上げられなかったらしい。
少し俯いて、席を立った。
猫は楽しそうにマグロを食べている。



変わらないで
ずっと僕が
見ているから

きみの作る物語
ずっと僕が
見ているから

時々僕はいなくなるけど
またすぐ戻ってくるから

変わらないで
ずっときみを
見ているから

僕の見たい物語
いつもきみが
持っているから

時々僕は消えているけど
いつもきみを忘れないから

変わらないで
きみのままで

きみのままで
変わらないで




お婆さんが帰って来ると、チャンネルが変えられている。
何者かによる陰謀に違いなかった。
イビチャ・オシムの顔がアップになると、猫は少し襟を正した。

「黄金布陣だって?
「10番をフォワード起用だって?」

お婆さんが、どうでもよさそうにつぶやいた。
けれども猫は、自分のことを呼ばれたように椅子から跳び下りた。
お婆さんのサンダルを奪うと、早速ドリブルを開始する。

その横顔は、夏に貼りついたオシム語録のように揺れていた。

「シュート!」

お婆さんの声で、猫が左足を振り抜くとサンダルは画面の中に吸い込まれていった。
俳句の番組が始まって、
お婆さんは、短く笑った。


テーマ : 短歌
ジャンル : 小説・文学

猫の背伸び

さるも木から落ちるとお婆さんが言っていた。
猫は、自分がそんな立場になるとは思わなかったのに。
あの日から、まだ木に登ることができない。
今、魚の生る木を目の前にして思い悩みながら、
そして少しだけ楽しんでいる。

「なんで魚なんだろう……」



私は稀にみる猫
誰かの夢に出る
おかしな猫

私は稀にみる猫
どこかの絵本に
浮き上がる猫

私は翼のない猫
尾びれだってない
みんなと似たように

私は木に登れない猫
いつからか
人が言うように

魚のなる木に
精一杯手を伸ばす

いくら背伸びしてみても
私は猫

けれど気持だけは
象であったり
竜であったり

人の気持は
まだ わからない




猫は、うさぎのようにピョンピョン跳ねて、魚に食いつこうとした。
けれども、猫は自分が猫だと思い出した。
見かねたお婆さんが、木を元気付けるように揺さぶる。
猫は額に落ちてきた魚の冷たさに驚いた。

その横顔は、魚降る夜の中の釣り人のようだった。



テーマ : 児童文学・童話・絵本
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

最近のTB / 返詩
そんなカテゴリー
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『折句ストレート』

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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