黒い翼『存在』
2007-05-03 Thu 08:29
犬の吼え声で猫は気がついた。
白い雲が上にあり、足の下に地面があった。
当たり前のことに、妙に安堵感を覚える。

「それにしても、ここはどこだろう……」

猫が、そのようなことを思うのはとても久しぶりだった。



種々の理由と
理由もない何かが
僕をここに導いた

確信もないのに
居続けて

落ち着かないままで

個々の理由と
理由もない何かが
僕をここに連れてきた

ここがどこでも
僕が誰でも

種々の理想と
理由もない何かを
求めながら

約束もないのに
待ち続け

満たされる時は
滅多とないのに

種々の理由と
逃れられない何かに
追われるように

この場所に流れ着き

確信のないまま
居続けて

満たされた瞬間
不安は始まっているのに

ばらばらに蒔かれた種が

一夜の雨の元で
結集するように
あるいは意志を持ちながら
大地に身を寄せているように

種々の理由と
理由もない何かが
僕をここに導いた

問いかけてみても
答えはないのに

今はここにいる

何かに期待するように




人々の期待するような視線を、猫は感じた。
今、自分が立っているのはスタートラインだ。
スタジアムの中で、猫らしからぬプレッシャーに襲われる……。

その横顔は、希薄な存在感の中に表れた強迫観念のように固まりそうだった。

どうやら、おかしなことに巻き込まれてしまったようだ。
奇妙なレースの中に。






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