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黒い翼『黒い翼』

出口のないフェンスの中から、壮大な青の中に舞い上がった。
吠え立てる声も、今はもう聞こえなくなって。

「来るのが遅いじゃないか!」

しっかりと猫を抱きながら、カラスに文句を言う。
お婆さんはカラスを手なずけていたのだった。
えらいぞ! お婆さん……
猫は少し、見直した。



雄大な翼に包まれて
あの日
僕らは空を飛んだ

小さな家が離れていく
見る見る小さく
霞んでいく

人も街も遠く

失ったものは
夜のように大きい

黒い翼に運ばれて
あの日
夜空は僕らを抱いた

小さな世界が離れていく
小さな僕と
離れていく

友も敵も遠く

失ったものは
夜のように大きい

雄大な翼に誘われて
あの日
僕らは空を飛んだ




猫は思い出していた。
カラスに誘拐された月夜のことを……。
昨日のことだったか、それとももっと前だったか。
カラスは家の前まで二人を送り届けてくれた。
羽根を一枚落とすと、再び青空へと飛び立った。
猫は、憧れを込めて空を見上げていた。

その横顔は、失った青い鳥を探すように未練を残していた。

二人は月を見るたび、あのカラスを思い出している。
今でもお婆さんの家には、家宝のように飾ってある。
あの時の、美しい羽根が……。




さよなら
さよなら

黒い鳥

包まれた夜の中で
身動きも出来ず
僕らの遥か下で

世界だけが動いていた

さよなら
さよなら

未来鳥

今から僕ら
自分の意志で
歩いて行こう

さよなら
さよなら

きみの残した
大きな羽根を
振りながら

僕らは何度も
さよならと
唄おう

本当のさよならは

さよならも言わせないから

さよなら
さよなら

いつまでも
夜の残像に

僕らは
唄う


さよなら

さよなら







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テーマ : 児童文学・童話・絵本
ジャンル : 小説・文学

黒い翼『フェンス』

今や、猫とお婆さんはすっかり囲まれていた。
無数の追っ手たちに。
お婆さんは、巾着袋から何やら取り出すと、獣たちに向け投げた。

「食らえー!」

けれども、猫ビスケットは役に立たなかった。
全く何も……。



囲われている

危険な部外者を
一歩も近づけぬために
囲われているから
守られている

囲われている

危険な侵入者を
一歩も入れぬために
囲われているから
守られている

囲われている
中にある
秘密

ドロドロと
見えない

囲われているから
隠蔽されている

囲われている
中にいる


ゾロゾロと
黒く

囲われているから
逃げられない

囲われている
気がついたら
縦も横も

囲われている

囲われているから
逃げられない

気がついたら

昨日も今日も




この瞬間も、逃げ場なく囲まれていた。
これまで何度も乗り越えたきた危機のことを、お婆さんは振り返ろうとした。
けれども、お婆さんは三日前のことしか思い出せなかった。
獣の群れが迫る。
もうすぐ、お婆さんと猫は手荒く胴上げされるだろう。
それが起こり得ることで、奇跡的に最良のことだった。
近づく、もう。
距離がない。
時間も、知恵も……。
その時、辺り一帯を突然夜が訪れたように闇が包み込んだ。
巨大カラスが戻ってきたのだ。
猫は再び畏怖なるものに目を向けた。

その横顔は、囲み切れぬ壮大な宇宙を見上げる類人猿のようだった。

獣たちは逃げ惑った。
やはり、大きな翼だ。




テーマ : 奇妙な物語
ジャンル : 小説・文学

黒い翼『レース』

スタートラインの上で猫は孤独だった。
犬、犬、犬……
どこを見たって犬しかいない……。
なのに自分はなぜに猫だろう。
人間たちが熱心に犬を応援する。
後ろを振り返ると、お婆さんが椅子に座っていた。
けれども、とても怖い顔をしている。
開始の笛が鳴ると、仕方なく猫も走り出した。



誰よりも先に
きみの影に追いつこうと

闇夜の中を駆け抜けた

誰よりも早く
きみの隣に並びたいと

疾風のように過ぎるきみを

遥か遥か後方から
誰にも負けずに追いつこうと

闇夜の孤独を駆け抜けた

誰よりも先に

誰よりも抜きんでたきみに

一番に追いつこうと

我を忘れて駆け抜けた

闇夜の中で
伸びすぎた影は
見失った分身のように

あり得ないくらいの長身は
大地に張り付いたままで

おぼろげな先端から

呻くように
諭すように
囁いてる

声がきこえる

もういいよ




「やっぱり、もういいや!」

猫は途中で走るのを止めた。
自ら力を抜いていく方を選んだ。
誰よりも先に、人間の元に戻ってきたのは猫だった。
駆け寄るとお婆さんが、笑顔で迎えてくれた。
けれども、後を吠え立てながら犬たちが追ってきた。
まるで裏切り者を責めるように……。
猫は、逃げ込むようにお婆さんの胸の中に飛び込んだ。

その横顔は、あたかも敗北を知らない犬がリタイヤしたみたいだった。

お婆さんは、猫を守るように抱えながら駆けた。
出口はない。
どこにもない。
あるのはフェンスだけ……。




テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

黒い翼『存在』

犬の吼え声で猫は気がついた。
白い雲が上にあり、足の下に地面があった。
当たり前のことに、妙に安堵感を覚える。

「それにしても、ここはどこだろう……」

猫が、そのようなことを思うのはとても久しぶりだった。



種々の理由と
理由もない何かが
僕をここに導いた

確信もないのに
居続けて

落ち着かないままで

個々の理由と
理由もない何かが
僕をここに連れてきた

ここがどこでも
僕が誰でも

種々の理想と
理由もない何かを
求めながら

約束もないのに
待ち続け

満たされる時は
滅多とないのに

種々の理由と
逃れられない何かに
追われるように

この場所に流れ着き

確信のないまま
居続けて

満たされた瞬間
不安は始まっているのに

ばらばらに蒔かれた種が

一夜の雨の元で
結集するように
あるいは意志を持ちながら
大地に身を寄せているように

種々の理由と
理由もない何かが
僕をここに導いた

問いかけてみても
答えはないのに

今はここにいる

何かに期待するように




人々の期待するような視線を、猫は感じた。
今、自分が立っているのはスタートラインだ。
スタジアムの中で、猫らしからぬプレッシャーに襲われる……。

その横顔は、希薄な存在感の中に表れた強迫観念のように固まりそうだった。

どうやら、おかしなことに巻き込まれてしまったようだ。
奇妙なレースの中に。





テーマ : 児童文学・童話・絵本
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

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おかしな比喩を探し求める内に
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今日も散らばって行こう
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「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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