黒い翼『月のカラス』
2007-04-28 Sat 08:59
すっかり日も暮れてしまった。
お婆さんは、ゆっくりと歩きながら前方の街灯を見た。
けれども、それは月だった。

「お婆さん、今日は月がとても光っているね」

お婆さんのエプロンの中から、猫がリスのように首を出した。



月は太陽
僕はあいつ
あいつはどいつ

川は海
笑顔は涙
よいしょは愛想

火星は水星
異性は魅惑
あいつはあいつ

シルエットだけでは
わからない何か

どう映って
実際どうだった

魔女は紳士
魔法は科学
愛情は無情

メルヘンには
みえない何か

シルエットだけでは
知り得ないものだよ

本当の形は

どう映った

あなたには




落ちてきそうな月の中から、一羽のカラスが下りて来た。
近づくほどに影を増しながら、一直線に向かってくる。
お婆さんは一歩も動けずに固まっていた。
巨大な翼が、足下を照らす光と前に進む意志を奪っていたのだ。

「ああ……、ダメだ」

巨大カラスは、お婆さんと猫を鷲づかみにした。
抗し難い力で。
猫は無力な目で影を見た。

その横顔は、月を失った夜のように不安に満ちていた。

お婆さんの足が地面から離れていく……。




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