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黒い翼『離陸』

上空高く舞い上がる。
カラスの翼の下で、今お婆さんは空を飛んでいる。
懐の中で、猫を落とさないよう強く抱えながら。

「素晴らしい、夜景……」

恐怖に打ち勝つため、お婆さんは良い方向に考えようとした。
楽しむのだ。



住み慣れた大地から
足が離れる瞬間に

初めて
足元にあった何かを
思い始める

さよなら惑星
確かにそこにいたね

今が確かなら
きっと

賑やかな歌々を離れ
音のない世界へ

抜け出して
耳元にあった息吹を
思い出す

さよなら地球
確かにそこにいたね

確かめることはできないけれど

あの時
あの場所
そして今 ここで

さよならきみ

いまなら僕

わかるよ


僕がいたのは夢の中

ねえ きみはどうだった


きみにとっては




二人にとって、試練の時が続いた。
せめてもの救いは、猫の体重がとても軽かったことだ。
恐ろしい魔物の下で、猫は動じることはなく……
暖かなお婆さんの懐の中で、ゆっくりと睡魔が訪れた。
猫は、空を飛びながら眠る。

その横顔は、きっと浮世離れした猫のように見えたことだろう。

お婆さんは、そんな猫を頼もしく感じた。
その存在を……。



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テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

黒い翼『月のカラス』

すっかり日も暮れてしまった。
お婆さんは、ゆっくりと歩きながら前方の街灯を見た。
けれども、それは月だった。

「お婆さん、今日は月がとても光っているね」

お婆さんのエプロンの中から、猫がリスのように首を出した。



月は太陽
僕はあいつ
あいつはどいつ

川は海
笑顔は涙
よいしょは愛想

火星は水星
異性は魅惑
あいつはあいつ

シルエットだけでは
わからない何か

どう映って
実際どうだった

魔女は紳士
魔法は科学
愛情は無情

メルヘンには
みえない何か

シルエットだけでは
知り得ないものだよ

本当の形は

どう映った

あなたには




落ちてきそうな月の中から、一羽のカラスが下りて来た。
近づくほどに影を増しながら、一直線に向かってくる。
お婆さんは一歩も動けずに固まっていた。
巨大な翼が、足下を照らす光と前に進む意志を奪っていたのだ。

「ああ……、ダメだ」

巨大カラスは、お婆さんと猫を鷲づかみにした。
抗し難い力で。
猫は無力な目で影を見た。

その横顔は、月を失った夜のように不安に満ちていた。

お婆さんの足が地面から離れていく……。



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「キャッツ婆」集合

久しぶりに握るハンドルは少し重かった。
お婆さんは、猫のチームを乗せて運んでいる。
夕暮れの風が心地良く吹きつける車内、
猫たちは背番号を巡って、言い争っている。
出発して一時間が経つが、練習場にはまだ着かない。
海が見えはじめて、空気も少し和んだようだ。



どこまで行けば
僕たち
行き着ける

わからないまま
進むしかないの

どこまで話せば
僕たち
落ち着ける

わからないまま
話すしかないの

どこまで行けば
僕たち
一息つける

わからないまま
生きるしかないの

どこまでも
どこまでも

生きるしかないの

どこまで離れれば
過去は
見えなくなる

わからないから
逃げるしかないの




練習場に着いた時には、もうすっかり夜だった。
けれども、猫たちは月と共に輝き降り立った。
キャットサルチーム「キャッツ婆」の紅白戦だ。
お婆さんの猫は、10番をつけたため理不尽なマークが集中した。
ボールを受けた瞬間二人がかりで倒されてしまった。
猫はひっくり返ったまま、お婆さんの方に顔を傾けた。

その横顔は、夜を転げ落ちた栄光のようだった。

猫は、怒りながら起き上がった。




後ろから
こそこそと
つけ狙ってはいけない

堂々と
正面から行きなさい

後ろから
追いかけて
引っ張ったりしてはいけない

正当に
ボールに行きなさい

見えないところで
悪さをしてはいけない

目を見て
ハートに行きなさい

そうして奪われたら
こっそり
褒めてあげよう




猫はお婆さんに褒めてもらいたかった。
ディフェンスの猫3人を引きずりながら切り裂いた。
中央突破から左足で強烈なシュート……。
けれども、シュートは空振りだった。
猫はその場に倒れこんだ。
ひっくり返ったまま、お婆さんの方に顔を傾けた。

その横顔は、幻のゴールのようにおぼろげだった。

猫は、怒りながら起き上がった。
いよいよ熱くなってきた。



熱せよ
メラメラと
熱い魂を

熱せよ
コロコロと
転がらぬ内に

熱せよ
打ちのめせ
弱き心を

熱せよ
今ここで
逃げ出さぬ内に

熱せよ
フラフラと
彷徨う夜を

熱せよ
雨も
零れ落ちぬほど

熱せよ

きみと
ぼくと

災厄を
蹴り上げて

熱せよ

すべてを
振り払って

何もかも
傾けて

熱せよ




キャッツ婆の紅白戦は熱っぽく続いた。
それから急速に冷めた後、監督の下に集合した。
お婆さんは良かった点、もうひとつだった点を説いた。
けれども、猫たちはあまりにも無関心だった。
帰りの車内、夕暮れとは打って変わって静かだった。
10番は燃え尽きたように、お婆さんの膝の上で眠っている。

その横顔は、ようやく落ち着いたボールのように丸かった。

明け方の心地良い風の中で、猫の寝息だけが聞こえる。
朝日がゆっくりと、10番の背を照らし始めた。





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海の幸

猫は泳ぎが得意だった。
亀がカケッコが得意なように、生まれながらの才能なのだ。
今日は、たくさんクジラとすれ違う。
どこへ行くのだ、クジラさん……
みんな、方向を間違えているよ。
猫は、深い眠りの海の中にいた。




さよなら海よ
私は地上に降りました

ひとを持て成すため
切り刻まれ
炒めつけられ
口々に運ばれて

人々を楽しませながら
命の素となるでしょう

さよなら海よ
私は地上に上がりました

ひとを満たすために
塩がかかり
手がかかり
旨味に包み込まれて

人々を満たしながら
新しい命となるでしょう

さよなら海よ
運命は波のようです

ひとは手を合わせます
ほんの一瞬時を止めながら
手をかけられた
わたしたちにも





いくら泳いでも、疲れることを知らない。
それが猫だった。
鮫に追いかけられて白猫になったり、
タコに墨をかけられて黒猫になったりして、
世界を三周してお婆さんの家に帰ってきた。
食卓の上には大好きな、シーフードのフルコース。
猫は一瞬にして覚醒する。

その横顔は、七つの海を股にかける猫のようだった。

「いただきまーす!」

猫とお婆さんは、仲良く手を合わせた。
口の中にひとつの海が広がっていく。





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雪女

お婆さんはお婆さんとにらめっこする。
どちらも譲らない勝負の行方は、猫にもわからない。
やがて、お婆さんは顔に張り手を浴びせる。
布団を叩くような音がする。
だから、猫は少し雨の心配を始めた。




私はいま若返る
輝く夏のように
訪れる春のように

誰よりも若返る
夜明けの海のように
海辺の足跡のように

心地良い無知の中で
唄っていたあの頃のように

私はいま若返る
はしゃぐ金魚のように
瞬く息吹のように

誰より若返る
真っ白な雪のように
まっさらな空のように

私は若返る
母なる大地を踏みつけて
美しく生まれ変わる

空から 黒い雨が降ってくる





にらめっこは冷たい顔をしたまま終わった。
振り返ると、お婆さんは別人のように若返った。

その横顔は、千年前の雪女のように憂いを散らしていた。

猫の方を向いて少し微笑む。
猫は、驚き震えながら窓の外を見た。
心配していたとおり、雨が降り始めている。
そういえば、今年も雪を見なかったな……。
いつからだろうか。








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眠れない猫

羊さんがおひとりさま、
羊さんがおふたりさま……
羊を数え始めた猫は、自分が最初かも知れない。
猫は、大勢の猫が考えるのと同じように思った。
お婆さんは、ソファーの上で気持ちよく眠っているけれど、
猫は、ベッドの上でなぜか眠れぬ午後を過ごしている。




羊がひとり
羊がひとりを呼んで
羊がふさふさ現れる

仲間の羊固まって
まとまりとなってやってくる

多勢に無勢がきみの孤独

羊がひとり
羊がひとりを連れて
羊がわなわな現れる

若葉の羊まとまって
綿菓子となってやってくる

10対0がきみの敗北

みんながひとり
みんながひとりを生んで
みんなはみんな笑ってる

むくむく広がる羊の陽だまり

羊はみんな
みんなは羊

きみがひとり

眠れなくなる





羊が100人の村を作り始めた頃、
猫はようやく、うとうとし始めた。
けれども、ソファーの上から羊が起き上がって我に返る。
お婆さんが羊に食べられてしまった!
猫は跳び上がって驚いた。

その横顔は、羊の方程式を解く数学者のように真っ白だった。

とりあえず、猫は逃げることにした。




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キャットサル

猫は飛び出した。
右足でパスを受ける。
詰めてきた猫をひらりとかわす。
猫をかわし、猫をかわし、猫をかわした。
猫は更にもうひとりの猫をかわして、ゴール前に迫る。
必死でカバーに入る猫。
ファーサイドに味方の猫がいるが、猫はゴールしか見えていない。




何もない時に
目に映るゴールは
玄関のように近いけれど

始まらない時
ただそこにあるゴールは
宇宙のように大きいけれど

物語が動く時
ゴールは
じっと動かずに

種々の障壁が
少しずつ
少しずつ

ゴールを小さく霞ませて
幸福のように
見えなくする

静止した時間に
ゴールは
ポケットのように近いけれど

何かが動き出した時
世界が動き出した時

僕らも動き出すのだろう

時のゴールを見失わないように

ひとつのいきものとして





猫は鋭い切り返しで猫をかわすと、左足でシュートを放った。
シュートは猫の真正面に飛んで、猫が無難にセーブした。
ファーサイドにいた猫が不満げに奇声を上げる。
けれども、猫は気にしない。
自分のシュートの精度のみを反省していた。

その横顔は、個人技を磨き続ける猫のように光って見えた。

次こそは……。
猫はまた走り出す。 




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ついでの時

季節が変わる頃になると、部屋を片付ける。
ついでに自分のこころの中も……。
それはお婆さんのモットーのようなものだった。
季節の到来は鼻先でわかる。
けれども、最近はそれも少し怪しくなった。
引き出しの奥から出てくる宝物を、猫も物色している。




ついでの時を
見つけに
出かけよう

ついでの時は
どこに隠れているか
わからないから

こちらから
出向いていこう

ついでの時と
余裕を見せすぎないで
今から出かけていこう

ついでの時を
迎えに
旅に出よう

ついでの時は
遠慮深く
秘められているから

自分で
切り開いていこう

ついでの時を
信頼することなく
わざわざ呼びに行こう

ついについに
訪れるその時を

ただ
待ってなんか
いられない

ついでの時を
つかまえに
出かけよう

ついでに隠された
真実を見つけに

今から行こう





古びた箱の中から、懐かしそうに取り出した。
お婆さんの歌を吹き込んだ、デモテープだった。
どこかに応募する予定もあっただろうか……。
お婆さんは、もうすっかり忘れていた。
けれども、歌い始めた。
それは春の歌だった。
猫は、流れる旋律の中でゆっくりと眠りに落ちた。

その横顔は、ついでに訪れた夢のように屈託がなかった。





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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
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今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

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「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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