春の小旅『終点を越えて』
テリトリーを飛び出して進んだ。
未知の世界には、どんな外敵がいるかわからない。
猫は、いつにも増して慎重だ。
わくわくと、どきどきを巧みに絡めながら歩き続けた。
終着駅のその先に
見知らぬ道がある
僕は歩こう
行き先も考えず
歩いていれば
きっとみえるさ
自分が動けば
風景も変わる
終着駅のその先に
見知らぬ人がいる
僕は進もう
後先も考えず
動いていれば
歩幅は変わるさ
自分が変われば
世界も動く
終着駅のその先に
見知らぬ僕がいる
歩道もない田舎道
時間も気にせず
ゆっくり歩こう
新しい春に
行き当たるまで
行き当たるものは何もなかった。
ただ、お婆さんの家が遠のいただけだった。
けれども、猫は振り返ることなく歩いた。
その横顔は、終点のない季節のように揺れていた。
春はまだ見つからない。
だから、猫は歩き続けた。